本研究は,教師教育者の専門性開発の方略を海外先進地の取組とそれを支える思想と方法論を手がかりに開発することを目的としている。本目的を達成するために,1年次はノルウェー,2年次はアイスランドの調査を行い,3年次には教師教育者の専門性開発の比較考察と理論化を行った。4年次の本年度は,理論化の成果に基づいて研修を開発・実践するアクションリサーチを行った。その結果,以下の成果を得た。 第1に履修証明プログラム「教師教育者のためのプロフェッショナルディベロップメント講座」を開講し,附属校の実習指導者,教育センターの指導主事・管理者,大学の教職課程担当者を対象に1年間のプログラムを実装できたことである。11名の受講者を得て,①自己省察パート,②理論習得パート,③研究・論文執筆パート,④再自己省察パートの4段階の研修を提供し,教師教育を対象とした研究力向上と教師教育者としてのアイデンティティ確立を企図した。 第2に履修証明プログラムの受講者が教師教育を対象とした論文を3本執筆できたことである。「高校教員にとって異動という経験がもつ意味-自己を研究対象にするセルフスタディを用いた探索的研究-」(岡村美由規他著),「学校ベースの教師教育者は教育実習指導経験をいかに意味づけているのか-4名の教師への相互インタビューを通して-」(宮本勇一他著),「教師教育者のアイデンティティの獲得プロセス-指導主事や特別支援教育コーディネーターへの移行にともなう転機や困難に注目して-」(大坂遊他著)を『学校教育実践学研究』誌に掲載できた。 第3に履修証明プログラムの受講者に対して聞き取り調査を実施したことである。研究活動を基盤にしたプログラムにおいて,受講者はどこに・どのような学びの意味を見出したか,知識・能力やアイデンティティの変化をいかにメタ認知しているかについて調査した。本結果は,引き続き質的な分析を続ける。
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