令和2年度までに教育相談研修「箱庭体験グループ」の実践と事前事後調査,フォローアップ調査が全て終了し,令和3年度は下記の3つの観点からそれらの分析を行い,成果を発表した。 (1)量的指標による研修の効果の検討:「箱庭体験グループ」の効果を「自己受容」「存在受容感」「他者受容」「教師のイラショナル・ビリーフ」の4つの指標により,実施前後で比較検討した。その結果,グループ参加後にはこれまでの自分の生き方やありのままの自分をより受け入れらるようになっており,研修により自己理解が促進されたことが示された。これについては「箱庭を活用した教育相談研修の効果―自他に対する理解と受容に着目して―」というタイトルで学会発表を行った。現在,この内容にフォローアップ調査の結果も加え,論文としてまとめているところである。 (2)体験過程の質的検討:「箱庭体験グループ」は個人箱庭制作とグループ箱庭制作からなっており,令和2年度はグループ箱庭の制作体験の分析を行った。令和3年度はこれに続き,個人箱庭に焦点をあてて分析を行うとともに,一連の個人箱庭制作およびグループ箱庭制作によって参加者にどのような内的体験が生じていたかを検討した。その結果,一連の箱庭制作体験のなかで自己理解・他者理解の深まりが見出され,質的な側面からも研修の効果が確認できた。この成果は「箱庭を活用した相談研修における体験過程の検討―個人およびグループでの箱庭制作体験に着目して―」というタイトルで論文として発表した。 (3)教育相談および教育相談研修の現状と課題:今後,本研究で実践した教育相談研修を学校現場で活用するためには,教育現場の実情やニーズをふまえた実施方法を検討する必要がある。その指針を得るために,教師自身が教育相談に求められる能力や研修をどのように捉えているのかを質問紙調査から明らかにすることを試み,論文にまとめた。
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