研究課題
養護教諭は「養護をつかさどる」教育職員である。養護教諭を養護教諭として成り立たせる養護の本質は「養護をつかさどること」の中にある。一方、養護教諭の職務や役割は現代的な社会問題や健康課題の影響を受け、子どもの実態やニーズに寄り添うためその内実には曖昧さも伴う。そのため養護教諭は「養護とは何か」「養護をつかさどるとは何か」と養護の本質について、絶えず自らに問いながら養護実践を行っている。近年、養護教諭の実践の基盤となる養護学の構築のため、養護の本質をふまえた理論の開発が喫緊の課題であり、養護学の理論構築のための手法の開発も早急に必要とされている。本研究の目的は、養護教諭の実践の基盤となる理論の開発のため、養護教諭が自らの実践から養護の本質を問い、その実践を概念化し理論化する方法を構築すること、あわせて養護教諭養成教育から現職教育まで、系統的に活用できる教育プログラムとして開発することである。研究の実績は、第一に養護学における理論構築の現状、また教育学や看護学等の近接領域での理論構築の状況について、文献検討を実施した。第二に養護教諭が自らの実践を省察し、自らの養護実践から養護の本質を問い実践を概念化する演習方法を考案し、パイロットスタディを実施した。養護教諭養成教育のステージにおいては、養護実習後に自らの養護実践を振り返り、実習で経験した実践について概念化を試み、養護教諭現職教育のステージにおいては、教員研修等で自らの養護実践を振り返り、自らの経験に基づき養護実践の概念化を試みた。それらの試みをもとに、教育プログラム全体の方法論的検討を重ねた。今後は、養護教諭が自らの実践を省察し、養護の本質を問い、実践を理論化する系統的な教育プログラムの一般化を図ること、ならびに養護教諭が生成した養護の本質の概念について分析を継続する予定である。