研究課題/領域番号 |
18K02677
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研究機関 | 秋田公立美術大学 |
研究代表者 |
毛内 嘉威 秋田公立美術大学, 美術学部, 教授 (70712769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 道徳科 / 遠隔化システム / 探求型授業モデル / 課題意識 / 道徳的価値 / 評価 / 授業改善 / 指導と評価の一体化 |
研究実績の概要 |
学校現場での道徳科の実施については、学校間・教師間格差のため、多くの学校で共通して取り組むことが難しくなっている。本研究は、このような状況の解決のために、遠隔化システム(Zoomミーティング)を活用して学校・教育行政・大学研究機関が連携した取り組むシステム作りを推進し、「探究型授業モデル」の開発をしたり、一人一人のよさを伸ばし成長を促すための道徳科の評価を充に努めたりして、道徳科の指導と評価の開発的研究に取り組む。 「探究型道徳授業モデル」の要素として、以下の点が明らかになった。①教材や児童生徒の生活体験などを生かし、課題意識や課題追究への意欲を高める工夫をする。②一定の道徳的価値に関わる物事を多面的・多角的に捉え、理解した道徳的価値から自分の生活を振り返る活動を設定する。③道徳的価値や生活を多様な観点から捉え直し、納得できる考えを導き出す問いを設定する。④表現活動や話合い活動を設定して自らの成長を実感したり,これからの課題や目標を見付けたりする問いを設定する。⑤道徳的価値に照らして,「自らの生活や考えを見つめる」振り返り活動を工夫する。⑥道徳科における効果的な学び方(思考ツールなど)を児童生徒自らが主体的に選択する場を設定する。⑦児童生徒自らが道徳的価値を実現するための課題や目標,道徳性を養うことのよさや意義について考える問いを工夫する。⑧道徳科の学習全体を見通し,自らの課題や目標を捉えるための学習活動を設定する。⑨授業開始時と終了時における考えの変容が分かるように視覚化するなどの工夫する。 この探究型道徳授業モデルの成立には、教師が児童生徒の人間的な成長を見守り,よりよい生き方を求めていく努力を認め,それを勇気付ける働きをもつ評価が不可欠である。教師にとっても、授業改善・充実に取り組むための評価システム(指導と評価の一体化)を構築する必要が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の取組について、以下の項目で自己点検を行い、進捗状況として報告する。 ①児童生徒の経験や体験を基に考え深める探究型道徳授業モデルの開発については、北海道から九州・沖縄県まで全国50校以上の小中学校を訪問したり、遠隔システムを活用して参加したりして、各学校の実態に応じた探究型道徳授業モデルの開発に取り組み、一定以上の成果をあげた。 ②家庭や地域社会の人々を巻き込んだ授業モデルについては、学校現場が家庭や地域社会との連携方針の策定や道徳授業の公開の取組が主であり、「家庭・地域と融合した探究型道徳授業モデル」の開発までは至っていない。学校現場の状況を考慮すると、いじめ問題や現代的な課題に対する授業モデルの開発への方向転換が必要と考える。 ③教師が児童生徒の人間的な成長を見守り,よりよい生き方を求めていく努力を評価し,それを勇気付ける働きをもつ評価の開発については、研究成果としてまとめるなど、一定以上の成果をあげている。しかし、学校現場の活用は、十分とは言えない。今後、さらなる啓発普及活動を進め、学校現場における指導と評価の一体化の取り組みを推進したいと考えている。 ④遠隔化システムの運用(探究型道徳授業モデルの実施、指導と評価の在り方の検証)については、十分とはいえない状況である。大学経費で購入したZoomミーティングを活用して研究協力校や大学間連携を通して研究を進めてきた。しかし、学校現場は、当初、遠隔化システム(Zoomミーティング)に違和感や不信感があり、遠隔化システムを取り入れた連携が非常に少なかった。ほとんどの学校が直接的な指導を望んでいたが、Zoomミーティングの有効性が理解出来ると徐々に活用されるようになった。特に、コロナ感染の拡大により、遠隔化システムを活用した依頼が多くなった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により、学校活動が十分再開できずにおり、今後の研究の推進が危ぶまれている。しかし、こういう状況であるからこそ、遠隔化システムを活用した研究を推進し、道徳科の探究型授業モデルの開発に基づいた指導と評価の開発的研究を推進していく。特に、下記に示す道徳科の評価についての学校現場で普及をはかり、指導と評価の一体化の推進に努めていく。 道徳科の評価には、「道徳科の授業で見取る子供の評価(学習状況)」と「道徳科の授業に対する評価」の二つの側面があるが、これら二つの評価は別々のものではなく、相互に関連しており、一体的に捉える必要がある。例えば、指導案への記載の際に、道徳科の授業で見取る子供の評価は「視点」として捉え、道徳科の授業に対する評価は分析的に評価するという意味において「観点」として捉え、区別して記述する。 道徳科の授業で見取る子供の評価については、道徳科の授業の中で子供の学習状況を見取り、継続的に行った授業で子供の学びの成長の様子を評価することが求められている。この授業で見取る子供の評価では、「(一面的な見方から)多面的・多角的な見方へと発展しているか」「道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深まているか」といった視点を重視している。 道徳科の授業に対する評価は、学習指導課程や指導方法を教師自らが振り返ることである。そのためには、指導案等に評価の観点を記載し、分析的に評価することも求められている。この評価は、授業のねらいが達成されているかどうかを検証することが最も大事であり、何のためにそのような指導方法を用いたのかを、目標をしっかりと踏まえながら授業について振り返り、改善していくことが大事である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半からコロナの感染拡大が懸念され、当初予定されていた研究会等が実施できず、予算を繰り越した。 繰り越した予算については、旅費・遠隔システムに関する備品・消耗品等に使用する予定である。しかし、コロナ禍の中、学校現場への影響が大きく、見通しが立っていないのが実状である。
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