研究課題/領域番号 |
18K02680
|
研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
田中 統治 放送大学, 教養学部, 特任教授 (40128046)
|
研究分担者 |
加藤 崇英 茨城大学, 教育学研究科, 教授 (30344782)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カリキュラム・マネジメント / 高等学校 / 学びの基礎診断 / 学力評価 / 教員研修 |
研究実績の概要 |
本研究は、学業達成で平均下位層の高校生を主対象とする学習支援において、カリキュラム・マネジメント(以下、CMと略記)の果たす役割と課題を検討するものである。とくに文部科学省「高校生のための学びの基礎診断」によるCMの実現可能性に注目し、実践協力校で求められる教員研修プログラムの特徴を中心に検討する。CMが高校教員の間でなぜ低調になりがちなのか、そもそもCM研修へのニーズはどのような実態なのか、これが本研究の問いである。 2019年度は、仮説として高校教員の間で保持される「教科別下位文化」が教科等横断型の活動に消極的な傾向を生じさせるのではないかと考え、これを2017・18年度「高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための研究開発事業」研究協力校(16府県20校)によるプロジェクト、また他のCM研修のアンケートや担当者への聴き取りから探った。その過程で、年度末に発生した新型コロナウイルス感染予防措置によって、文科省協力校への訪問調査等が停止となったことから、代替策として文科省主催の連絡協議会の報告や各校HPの学校評価報告を調べた。また二つの県教員研修センターにおいて筆者が担当したCM研修会の事例をもとに、タイプ別に求められる教員研修の特徴を次の三つに類型化した。 すなわち、(1)CMの視点からの学力向上、(2)ICTの利用、及び(3)学び直しによる学習支援の三つである。とくに第3の学び直しに必要な支援活動は、生徒指導や教育相談と一体で取り組むべき特異な性質のものであるので、CM研修内容において実際的な改善を加える必要がある。そこでは財政的な援助のみではなく、地域をベースにした校外から高校生への学習支援の力も請われており、地域課題探究学習と関連づける学びが注目される。学び直しは、従来型の補習とは別の形態で、生涯学習活動と組み合わせるときに効果的であること等の視点を解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予期せざる事態として、2019年度末に発生した新型コロナウイルス感染予防措置によって、文科省協力校への訪問調査等が停止となったことが挙げられる。メールによる資料収集等の代替措置を講じたけれども、担当者の異動や協力校の終了、さらに調査協力への拒否があったため、現地調査が極めて困難となった。このため各高校のホームページで公開されている学校評価の資料を手掛かりに、学びの基礎診断の継続とカリキュラム・マネジメント(以下CMと略記)への取組みの状況を間接的に調べた。その結果、何らかの補助金が手当てされている高校では一定、事業が継続していることがうかがわれた、また調査拒否の事例では、「進路多様校」と称される高校において教員の間でカリキュラム・マネジメント研修へのニーズが高まらずその実施が困難化している状況が推察された。CM研修への高校教員のニーズそれ自体にまで踏み込む調査が必要である。そこで、筆者が担当した研修プログラムも含めて、いくつかの県の教員研修センターにおいて高校教員向けのCM研修プログラムの担当者を対象にメールによる意見交換を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は最終年度にあたり本研究の成果をまとめる必要がある。だが先述の新型コロナウイルス感染予防措置の実施が流動的であり、このため訪問調査によって資料を取集することは限界がある。そこで研究期間の1年延長も視野に入れながら、高校教員向けのカリキュラム・マネジメント(以下、CMと略記)の研修プログラムについて、学びの基礎診断の成果を組み入れた提案をまとめる方向を探ることとする。 そのために、独立行政法人教職員支援機構(NITS)や、また各県の高校教育課と教員研修センター等における担当者との意見交換による資料収集を試みる。さらに高校教育の専門家や雑誌編集者とのWeb会議やメールによるヒアリングを行う計画である。これらの補足調査を行うことによって不足した資料を収集して、最終的に研修プログラムの提案による報告を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染予防措置によって調査ができなかったために、旅費の使用が少なくなったことが理由として大きい。またこれに伴い物品の購入も持ち越された。調査は次年度に延期せざるを得ないが、場合によっては調査方法を変更することも視野に入れて、カリキュラム・マネジメント研修のプログラム案についての意見聴取を試みる。またその結果について研究分担者と打ち合わせながら補足調査も行う予定である。 全国専門学会の中止により研究成果の発表に必要な旅費も使用していない状況なので、Web大会での発表に切り替えて、これに要する資材等を購入する計画である。最終報告書のまとめについても、1年間の期間延長の可能性を探りながら、使用計画を再検討している。
|