最終年度にはコロナ禍による調査研究の遅滞から次の二つの代替的な方法を採って高等学校での「学びの基礎診断」とカリキュラム・マネジメント(以下、CMと略記)の特徴と課題を整理した。 第1に、教育新聞及び教育雑誌の記事を分析し、高等学校での学力診断とCMとの関連性を調べた。その結果、記事の頻度と内容において義務教育段階よりも関連づけが弱いことが判明した。理由の一つに、「学びの基礎診断」を必要とする型の高校では、学力検査とカリキュラムの改善とをつなげる課題意識が弱いことが挙げられる。「学びの基礎診断」の制度設計と運用に当たっては組織マネジメントの課題が大きい。 第2に、CMに関する教員研修の際に回収したアンケート等の結果を分析し、高校教員のニーズの特徴と課題を探った。小中学校教員の場合と比較して、教科別下位文化による閉鎖的傾向が強いことが確かめられた。カリキュラムの概念について理解されていないケースや、教員チームでCMに取組む態勢も弱いことが分かった。いずれの弱点もCMに関する教員研修で改善すべき点を具体的に示しており、これらの課題は高校タイプ別に類型化された研修内容の改善を求めている。 CMの展開は学校全体で取り組むべき組織上の課題でもあり、とくに対象校の場合、「学びの基礎診断」のみならず、学校評価の充実や地域連携の強化による継続的な取組みも必要である。民間機関が開発した外部試験の導入と運用に関して、研究協力校等での継続的な実践的研究が待たれるところがある。折しも大学入学共通テストにおいて記述式問題や外国語民間テストの導入が見送られたことによって、「学びの基礎診断」の導入と実施に当たっても、これと類似の受け止めがなされる傾向が生じている。特徴あるCMを展開するには、高校生の基礎学力を診断するための作問と採点、そして結果の分析と評価に関する一連の専門的力量を高めることが欠かせない。
|