研究課題/領域番号 |
18K02683
|
研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
森 敏生 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (30200372)
|
研究分担者 |
丸山 真司 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10157414)
玉腰 和典 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (60797174)
石田 智巳 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90314715)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 学習活動の創発性 / 指導と評価の一体化 / グループ学習 / 学習としての評価 / 学習のための評価 / 変容的評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、体育実践における学習活動の創発性の実態に迫り、それに相応した指導と評価の一体的関係を明らかにすることを目的としている。コロナ禍の影響により研究スケジュールに遅れが出ており、昨年度からの研究課題を引き継いで研究を延長した。今年度も、指導と評価の一体化が目標達成と目標創出の相互補完的な機能で構成されていることを明らかにすることを研究課題として、体育授業におけるグループ学習の実践分析を試みた。 昨年度の研究成果から、主体的・協同的なグループ学習は、学習課題の系統に則しつつも多様な学びを内包した共同学習であることが示唆された。これを受けて多様な学びの実態を2つのグループの学びを対比させて詳細に分析することで明らかにした。 グループ学習における学習内容・対象をめぐる対話的関係は、グループノートへのメンバーの記述を媒介として形成される。またノートへの教師のコメントが形成的アセスメントの機能を果たして関係の変容を促す。こうしたグループ学習の授業デザインは、教師の授業計画になかった学習対象への気づきからグループ共通の学習課題を創発的させ、学級全体の指導内容の改善・変更につながる。さらに、学級の指導内容の改善・変更によって、別のグループでは戦術課題の共有や解決方法の考察・理解を媒介とする対話的関係が生まれることになった。 グループ学習の授業デザインは、それぞれのグループノートを媒介とする「学習としての評価(assessment as learning:ASL)」を内包する。そして教師のグループノートの点検が「学習のための評価(assessment for learning)」となってASLに影響を及ぼすと同時に、新たな学習課題と活動を創発させる「変容的評価(transformative assessment)」につながることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の長期化により、対面での研究協議がほとんどできず、また授業のフィールド研究ができなかった。計画段階で予定していたアクション・リサーチを通して学習活動の創発性に相応した指導と評価の関係について実践的・実証的に探求することが十分できなかった。 しかし、詳細な授業実践記録の分析と授業実践者へのインタビューによって、一定程度は実践的な検証作業ができたものと考える。とくに、グループ学習という学習指導形態においては、グループノートを媒介とした授業時間ごとの指導と評価の一体的な関係(サイクル)が構築されていた。 また、グループノートへの指導的な書き込みが学習者の自己評価や相互評価を促す働きをしていることがわかった。同時に、子どもの学習課題に関する記述内容が教師の想定を超えている事例もあり、教師の反省的な応答によって目標創出的な相互関係が伺われた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、3年間の研究の成果をまとめる研究報告書を作成する作業を進める。 研究報告書の基本的な構成は、「問題の所在と学術的背景」「研究の目的と方法」「新たな学習理論の方法論」「体育実践における学習活動の創発性」「学習活動の創発性と指導と評価の一体化」「結論ー研究の成果と課題」である。 キーワードである「学習活動の創発性」に関しては、学習対象の創出、学習手段の創出、共同的な関係の創出という3つの側面からまとめる。 「指導と評価の一体化」に関しては、小学校低学年と高学年の2つの授業実践事例の分析・検討の成果をベースにまとめる。そこでは、学習課題の対象化・共有化を促す触媒的な機能を果たす指導と評価の関係に焦点をあてる。また、グループノートを媒介とする指導と学習における形成的アセスメントと反省的な応答が、学習のための評価、学習としての評価、変容的評価として機能していることを指摘する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度もコロナ禍の影響により、対面での研究打ち合わせ(協議)の機会が限られ、また学会等もオンライン開催となり、フィールドワークもできなかったため、当初計画していた旅費の支出がなかった。そのため次年度使用額が生じた。 次年度使用額に関しては、この研究を再延期するなかで、科研の報告書(冊子)を作成する経費に当てることと、報告書作成の打ち合わせの旅費に当てる予定である。
|