研究課題/領域番号 |
18K02684
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮崎 清孝 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90146316)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 保育 / アート / 遊び / 対話 / 三項関係 / 保育者 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者のこれまでの科研費研究を受けて,バフチン的な対話思想に触発されて発展している対話主義授業論の立場から、アート教育の意義を,遊び活動と比較しつつ,その対話構造を分析することで明らかにしようとする。平成30年度ではまず理論面で,対話的授業論の考え方を「三項関係」(子ども-活動対象-保育者)概念を中心に明確にしようとし,英文論文執筆を通しある程度の進展を見た。 データ取得に関しては、まず平成30年度の研究の中心である研究サイトの幼稚園での夏のアートワークショップについて幼稚園と協働し設定を行った。訪問は夏のワークワークショップを含め、計5回であった。夏のワークショップの対象児は年長児であり、毎回の訪問で観察の対象とした。それに加え、日常保育児には年少児、年中児のクラスでも観察を行った。これは今回のテーマがアートと遊びの比較であるため、その2つの関係の発達的な様相についても着目しているためである。業績の発表についてはこれまでの関連する科研研究をまとめ、今回の出発点となる研究発表をアメリカ教育学会(ニューヨーク)で行った。この際、海外の共同研究者であるFerholt(City University of New York, Brooklyn)と研究の打ち合わせを行った。 これらの活動の結果、以下の諸点がこれからの研究に向けて示唆された。(1)遊びとアート活動それぞれの特徴付けで、保育者の位置付けが重要である。(2)子どもたちの制作物に対する態度、たとえば大事に保管するといったものが,遊びの中で制作物をアート「作品」として焦点化するのではないか。(3)子どもたちの制作活動それ自体への関心(自他の作品をどう作るか、自分の制作活動の特徴は何かを対象化できること)がアート活動の遊び活動一般からの分離に繋がるのではないか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画に比べ進捗しなかった。その最大の原因は基礎理論である対話的授業論に関する検討、具体的には英文論文(2編)執筆が予定より遅れたためである。特に平成30年9月以降、論文修正のために多くの時間を割かざるを得なくなった。そのため、予定していた研究サイトである幼稚園の訪問を減らさざるを得なかった。同じ理由で,計画していたスウェーデンのpreschool訪問も行えなかった。さらに得られたデータの分析にも時間を割けなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度計画進捗の遅れとなった論文執筆は令和元年度へ継続する。しかし報告書作成の現時点で1本についてはほぼ完成し(in press)、もう一本についても見通しが立っている。したがって基礎理論面での考察に多くの時間が裂かれることはないと予想している。また次年度のための幼稚園での活動についてはすでに計画ができあがっており、特に支障はないと考えている。なお海外の共同研究者であるFerholt(City University of New York, Brooklyn)が研究代表者の大学へvisiting scholarとして令和元年7,8月滞在し、研究対象幼稚園での観察活動に参加する予定であり,有益な知見が得られるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」欄で述べたように平成30年度は計画がかなり遅れた。理論面での活動である論文執筆に時間を取られたため、主要サイトである幼稚園への訪問回数が予定より少なかった。また取得したデータの分析も遅れたが、それに必要な機器の購入も行わなかった。さらに海外の共同研究者の研究サイトであるpreschool訪問も行えなかった。そのためである。
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