研究実績の概要 |
2018年度は、大学の利益相反マネジメントの体制や運用に関する実態を把握し、利益相反マネジメントの課題を明らかにすることを目的として、民間企業との共同研究を実施した実績のある345の国公私立大学を対象としたアンケート調査を実施した。調査の結果、臨床研究に関するもの以外の大学における産学連携に伴う利益相反マネジメントは、利益相反ポリシーの制定や利益相反委員会、利益相反担当部署の設置など体制が相当程度整備されてきたものの、その実質が殆ど備わっていないことが明らかとなった。 2019年度は、教員の立場から見た、日本の大学における利益相反マネジメントの実態と課題を明らかにするため、民間企業との共同研究件数が上位50大学の国公私立大学において教員1,000人を無作為抽出し、アンケート調査を実施した。この結果、産学連携活動が活発に行われている大学では教員の利益相反に対する知識は一定程度普及しており、このため、研究活動に関するバイアスや成果発表の制約など、かなり高い割合で利益相反上の懸念が示された。一方で、利益相反の管理側の対応が不十分であることが示唆される結果となった。 2020年度は、2018年度に実施した調査結果を踏まえ、2019年度に実施した教員対象の意識調査の結果において医学系と医学系以外の教員の回答についてそれぞれ分析した結果、医学系以外では医学系よりも利益相反に遭遇した経験がやや少なく、また、利益相反に関する知識の普及も若干遅れていること、また、全体的に教育面よりも研究面での利益相反問題が大きいこと等の実態が明らかになった。また問題点の整理から、大学が組織として利益相反問題に取り組むことが一層必要であることなどについての提言も行った。
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