研究課題/領域番号 |
18K02699
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉森 公一 金沢大学, 高等教育開発・支援系, 准教授 (40581632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育開発 / アクション・リサーチ / ファシリテーション / ワークショップ / ダイアローグ / ファカルティ・ディベロップメント / FD / 質的分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者を含む大学・短大のFD担当者(ディベロッパー)あるいは高等学校等の教員研修担当者を対象にした質的研究を行う。対話によって為す個人と組織の省察的教育実践への介入の過程をアクション・リサーチに基づいて検証する。ファシリテーションによる対話型研修プログラムの開発と実践を通し、授業開発・組織開発の構築及びディベロッパーの対話資質の能力枠組に関する質的研究(アクション・リサーチ)から、次代の教育開発の在り方を提起する。 また、本研究全体のリサーチクエスチョンである、RQ1) 教育開発はFD担当者の個人の資質に頼っている状態にあるのではないか? RQ2) 対話型教育開発による学習共同体は、対話の過程でどのように形成されるのか?に関して、国内外のディベロッパーとの議論と研修の参与観察、研修の共同実施と開発を通して実証的に探ることを目的としている。 当該年度は、これまで行ってきたファシリテーション研修プログラムのデザインをふりかえり、教育ファシリテーションの技法を用いた教育実践の対話とリフレクション(省察)を促すための要素について、タフツ大学で行われている対話型研修枠組とディベロッパーとのディスカッションを通じて相対化を図るとともに、共同研究により研修プログラムの体系化を試みた。以上に加えて、授業に関する教育開発・研修にとどまらず、ディベロッパー及びFDセンターが組織開発に与える影響を検討する必要から、ボストン周辺の7つのFDセンターのディベロッパーへインタビュー調査を行い、ベンチマーク研究を行ない組織的な要素についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タフツ大学における研修参画と共同研究、多層的なFD研修プログラム群における参与観察によって、研修参加者間の対話による発達モデル(想定の保留に関するダイアローグ・サイクル)について分析し、研究代表者が行なってきた研修デザインの相対化とその体系化を図ることができた。その一部は、対話のプロセスを含むFDワークショップとして試行している。 また、ボストン周辺の7大学(ハーバード、MIT、ノースイースタン、ボストン大学、ボストンカレッジ、サフォーク、シモンズ)のFDセンターの所属するディベロッパーへインタビュー調査を行い、FD担当者(ディベロッパー)とFDセンターにおける組織開発の要素についてベンチマーク研究を行い、検討を加えた。成果の一部は共同研究として発表準備が進んでおり、大学教育学会大会での自由研究発表を行う予定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
過去に開発してきたファシリテーション研修について整理・分析し、研修参加者の授業における教授過程(授業開発)の変容・省察的教育実践について、インタビュー調査及びフォローアップを行う。授業開発の質的研究にとどまらず、対話プロセスが組織に与える影響についても、アンケート調査及びフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)調査を併用して時間的な変化を追跡する。結果として、FD担当者(ディベロッパー)の対話資質の能力枠組と組織開発の枠組を整理し、包括的な枠組(個人と組織変容に影響する教育開発の在り方)の検討を進めることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関よりサバティカル研修の旅費援助を受けたため、共同研究・海外調査にかかる費用が滞在国内旅費の一部にとどまったため。
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