研究課題/領域番号 |
18K02701
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中島 英博 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20345862)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大学改革 / 組織変革 / 組織学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、組織学習の理論枠組みを援用することで、大学教職員が職務を通してどのような学習を生起しているか、および、教職員個人の学習が組織的なルーチンの棄却や置き換えにどのようなプロセスで統合されていくのかを明らかにすることを目的としている。そのために、本研究では教育改善や業務改善など、これまでの仕事を変える必要に迫られた経験を持つ教職員を対象に、その経験を聞き取る調査を行う方法をとる。 2020年度は、全学的な教育改革等のプロジェクト業務に取り組んだ経験を持つ教職員が、新たに得た知識や考え方をどのように組織内の公式業務に反映していくかを明らかにする調査に取り組んだ。特に、多くの先行研究でプロジェクトを通じて形式知化された成果は活用されないという指摘がされているが、大学のような専門性で分断された組織では、何が活用を阻害する要因になり得るか、当事者間ではどのように暗黙知を共有するかに着目した。 主要な結論は次の通りである。第1に、複数部署から教職員が参加するプロジェクトでは、管理的なリーダーシップではメンバー間の学習が促進されない。チームが機能するまでの一時的な働きかけとして管理的なリーダーシップは有効だが、メンバー間の人間関係構築にのみ発揮すべきである。一旦、人間関係が確立された後は、メンバー間の学習の促進には分権的なリーダーシップが必要となる。第2に、メンバーはプロジェクトの中で新たな知識や概念に触れた際に、違和感を持てることが、メンバー間の学習を促進する際に重要である。これは4Iフレームワーク(Crossan et al 1999)における、直感から解釈への移行を促進することにあたる。 大学のような専門性で分断された組織における全学的プロジェクトでは、異なる価値観や経験を持つメンバー間で、取り組みの意味を、相互作用を通じて共通言語に変換するプロセスの重要性を示唆する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症対策のため、予定していた調査を一部中止せざるを得なかった。そのため、途中からオンラインによる面接調査に切り替えることで、計画した一部の調査を実施することができた。今後、研究協力者として参加予定の教職員も、オンライン面接に慣れてきたこともあり、今後追加で予定していた調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に予定したものの新型感染症問題により実施できなかった研究計画は、特例期間延長を申請して2021年度に実施する。この中で、現場教職員の業務経験聞き取りに加え、管理職者や役職者を対象とした聞き取りを行い、4Iフレームワークにおける制度化のプロセスを明らかにする調査に取り組む。また、2019年度までの成果をふまえ、深い組織変容(Kezar 2018)における、センスメイキングと組織学習の関係を明示する分析にも取り組む。その際に、浅い変容(Kezar 2018)の特徴を備えた組織と比較し、合理的計画的な組織変容との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症問題に伴う調査の中止、および、参加予定学会の中止・オンライン開催により、支出を予定した旅費を全て使用することができなかった。
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