本研究は、大学教員の教育活動を通した学習経験と、教員間の社会的ダイナミクスを考慮することで、ボトムアップの大学組織変容を可能とする条件を明示した。主要な成果は次の通りである。第1に、組織的な教育改善の取り組みは、現場の教職員が持つ経験を調整・統合する機会を必要とする。現場の教職員がそれぞれ解釈を交換し、共通言語や共通理解の生成をした組織では、部署最適傾向の強い大学組織でも、組織的な取り組みが有効に進められていた。第2に、複数部署から教職員が参加するプロジェクトでは、管理的なリーダーシップではメンバー間の学習が促進されない。メンバー間の学習の促進には分権的なリーダーシップが有効である。
|