研究課題/領域番号 |
18K02709
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
川本 龍一 愛媛大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (50542908)
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研究分担者 |
熊木 天児 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (30594147)
二宮 大輔 愛媛大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80773853)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域診断 / 地域医療実習 / 医学生 / 地域志向性 / 多職種連携教育 |
研究実績の概要 |
目的:地域診断では、地域のニーズを分析し、結果を政策に反映させていく機能を有している。本事業は、地域住民やそれを取り巻くメディカルスタッフなどの協力を得ながら、県内へき地で地域診断を行う場を提供し、学生における地域診断実習の有用性について検証を計り、学部教育の在り方、地域医療実習の内容提言などへの活用を図ることである。 方法:対象は、愛媛大学医学部学生。2018年4月から2021年3月。地域診断を導入した実習は、①地域診断を盛り込んだ地域医療実習、②地域診断に関するワークショップ、③多職種連携ワークショップなどである。われわれが以前開発した地域志向性を図る尺度、地域での仕事のあり方、仕事についての特徴、地域医療への思い等から成る質問紙表を実習前後で実施し評価した。 研究成果:評価対象となった学生は222人、男性120人と女性102人、年齢は23 ± 3(範囲、20-41)歳。地域診断を導入した実習前後において、「将来、診療所や地域の中核病院でライフワークとして働きたい」、「へき地の医療にはどのような知識が必要か知っている」に対する肯定的な回答率も著明に増加した。一方、「へき地医療は深刻だと思う」、「へき地医療に従事すると医療の進歩に遅れをとると思う」に対する肯定的意見は減少した。実習後の県内地域医療従事に対する学生の動機についてのロジスティック回帰分析では、「地元出身」、「親が医師」、「へき地の医療を実践することは価値がある」、「将来はへき地で働きたい」、「患者と話すのが好き」が、地域医療に参加する学生のモチベーション向上と独立して関連していた。一方、「他大学への入学経験」は、低下と関連していた。 結語:医学生における短期間の田舎での地域診断を導入した地域医療実習が、知識や地域医療への態度に影響を与え、地元での地域医療実践への意欲向上につながることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定の研究活動を概ね実践し、いくつかの学会や英文雑誌にもその成果を報告した。 ・Kawamoto R, Ninomiya D, Akase T, Kikuchi A, Kumagi T: The effect of short-term exposure to rural interprofessional work on medical students. IJME 11:136-137, 2020. 査読有 ・川本龍一、二宮大輔、赤瀬太一、菊池明日香、熊木天児、大塚伸之:医学生の田舎での多職種連携活動と 地域医療への思いに及ぼす研究.第10回日本プライマリ・ケア連合学会(2019.5.17-18、京都)
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今後の研究の推進方策 |
厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目標に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築の実現を目指している。医学生が将来医師となり患者中心の医療を実現していく上で、医師以外の専門職がどのような役割を担い、医師に何を期待しているかを知ることは重要である。今後の事業では、県内医師不足地域に位置する久万高原町、西予市野村町、宇和島市津島町、愛南町などにおける地域包括ケア活動を医学生の地域医療実習に組み込み、地域住民や役場関係者、メディカルスタッフの協力を得ながら参加学生の地域包括ケアに関する理解の向上を図る。また学生から得られるアンケートやポートフォリオを参考に地域包括ケア実習に関する評価尺度の開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ感染予防活動により予定していた実習が中止になり、残金が生じました。これに次いでは2021年度も継続して研究を行い使用していく予定である。
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