研究課題/領域番号 |
18K02710
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
天野 智水 琉球大学, グローバル教育支援機構, 准教授 (90346940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 同僚制 / 意思決定 / 大学組織 / 協働 |
研究実績の概要 |
意思決定への教員の参加は大学に功罪をもたらすのか.それは決定の領域によって異なるのか.その際,学長等のリーダーシップはどのように影響するのか.日本ではまだ検討の余地があるこの問いを検証するため,国内の国・私立大学の学部長および学科長を対象に実施した質問紙調査結果の分析を行った. 被説明変数としたのは,同僚制意思決定がもたらすと期待される部局内の同僚関係上の効用にかかる変数群と,同じく同僚制が支障となることが懸念される大学全体や部局間関係にかかる変数群である. 説明変数のうち教員組織の意思決定力にかかるものは,「大学経営」「教員評価」「教員選考」「カリキュラム」の領域ごとに評議会と教授会がそれぞれ有する影響力を示す変数群を設定した.また,リーダーシップにかかるものは,理事長・学長・理事・副学長の行動について尋ねた項目から得た変数群を設定した.その他,統制変数として人事,経営状況,設置者,学問分野等を設定した. まず,被説明変数のそれぞれを説明する重回帰分析を行った.次に,教員組織意思決定力と学長等リーダーシップの交互作用効果を確認した.分析の結果とそこから得られる実際的な含意は,日本高等教育学会第24回大会(2021年5月30日開催予定)で発表することとしている. 改めて,学問の自由の保障に必要不可欠な大学自治は教授会が大学の決定に影響力を有することからも確認できていたといえようが,その決定権が学内のあらゆる事項に拡大することを問題視する向きもあり,2014 年に改正された学校教育法により教授会の審議事項の明確化が図られた.本分析から得られる知見は,この動向の是非を問うという重要な意義があると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究目的達成のため当初計画通り質問紙調査を実施したところ,回収率が18.9%と全く想定していなかった訳ではないが比較的低調であり,本研究課題の性質上,回答者にとって必ずしも回答が容易ではない設問内容であったことが原因の1つと考えられた.そこで,対象者を実地に訪問する聞き取り調査の規模と深度を練り直したことに加え,コロナ過の影響でその実施方法の再考も迫られたことで遅れが生じ,補助事業期間を延長したため.
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今後の研究の推進方策 |
大学の意思決定と教員間の協働関係に焦点をあてた本研究は,質問紙調査と訪問聞き取り(インタビュー)調査,すなわちサーベイとケーススタディの2つの方法で実施することを計画していた.このうち前者は,母集団のサイズが大きく特徴も多様であると同時に全学的な意思決定過程の精通度が比較的低いと考えられる個々の教員ではなく,部局および学科の長を対象とするものだった. けれども,この選択には2つの難点が想定できた.1つは自部局や自学科内における協働関係の評価は客観的に判断できる指標がないために回答困難であろうこと,そしてもう1つは特に国立大学において教育組織と教員組織の分離という組織改革が進み,従来の組織長の想定が通じないケースがあるだろうことだ.この対応策として,①質問のワーディングと対象とする組織長の選定を念入りに行うと同時に,②質問紙調査後の訪問調査で具体的な情報を得ることで質問紙調査を補強することを計画した. しかし,②について,教員を対象としたインタビューが成立し難いことは質問紙調査実施前に企画した訪問調査で明らかとなり,加えて新型コロナの影響が予測しがたい事態となった.そこで,ケーススタディをインタビューではなく新たな質問紙調査により実施することとした.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していた訪問聞き取り調査を実施できなかったことから,組織改革を実施した6校程度の大学教員約2500名を対象とした質問紙調査により,前述した組織長対象質問紙調査の欠点を補完する.宛先リスト作成,質問紙等の印刷・郵送,および回収した質問紙のデータ入力を委託業者に依頼する.
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