研究課題/領域番号 |
18K02710
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
天野 智水 琉球大学, グローバル教育支援機構, 准教授 (90346940)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 同僚制 / 学長リーダーシップ |
研究実績の概要 |
意思決定への教員の参加は大学に功罪をもたらすのか.それは決定の領域によって異なるのか.その際,学長等のリーダーシップはどのように影響するのか.日本ではまだ検討の余地があるこの問いを検証するため,国内の国・私立大学の学部長および学科長を対象に実施した質問紙調査結果の分析を行い,その結果を取りまとめた論文を高等教育学会紀要に投稿したところである. ところで,上記調査の関心の1つは,学校教育法による教授会の審議事項の明確化といった動向が同僚制にどのような影響をもたらしうるかを読み取ることだったが,その過程で同僚制を説明する因子の構造は想定していたほど単純ではないこと,具体的には,居心地のいい共同体構築と教員間の積極的な協働関係は異なる因子であり,後者は想定していた枠組みでは説明が十分には行えないことが明らかとなった.そこで,一般教員からさらに詳細な協働関係を尋ねる別途調査が必要であると判断し,事例として選定した9大学に所属する4,200名の教員を対象とした質問紙調査を新たに実施した. 第1に研究発表会,紀要の編集,授業内容の調整,あるいは授業方法の相談など,教育研究にかかる具体的事項をどの程度の頻度で行うかを尋ねた.第2に同僚との関係性について評価を求めた.第3に部局予算配分額,教員ポスト,あるいはカリキュラム改善などの運営に関する関心と関与の程度を尋ねた. 約1,300名からの回答を得,データ入力を終えたところである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はサーベイとケーススタディの2つの方法で実施することを基本としている.具体的には,前者として実施した質問紙調査結果の考察から得られた推察の確からしさや含意の実際性を把握するため,後者として訪問聞き取り調査を実施するという当初計画であった. ところが,新型コロナの影響が予測しがたい事態となったことから,ケーススタディをインタビューではなく質問紙調査により実施するという方針転換をした結果が上記の9大学所属教員調査であった.急きょ新規に対象者リストと質問紙を作成することにやはり時間がかかり,年度中にデータセット構築までこぎつけたが詳細な分析にはいたらなかった. また,上記質問紙調査には馴染まない,やや例外的で特徴的な事例を対象とした調査事項があり,これについては若干の訪問聞き取り調査を行う必要があったが,コロナ禍により実施できなかった. 以上のことから補助事業期間を再延長したため.
|
今後の研究の推進方策 |
第1に上記1,300名分のデータを用いた分析を行う.その際,ケーススタディとして実施したことを踏まえ,組織特性の効果と個人特性の効果の両方を検証する分析方法を用いる. 第2に訪問聞き取り調査を行う.具体的には,全学教授会などと称される管理運営組織を有する私立大学4校程度を選定し,事務職員を含む管理運営に精通した関係者を対象とした調査とする.日本ではこの種の,つまり全学レベルの教員合議体でありながら構成員は部局代表者であることを前提としない教員合議体の存在はあまり知られていないが,実態に即した同僚制のあり方を提案することを目的とする本研究にとって,その詳細を明らかにし他大学への展開可能性を論じる上で重要な事例と考える.
|
次年度使用額が生じた理由 |
①実地に対象大学を訪問し聞き取り調査を実施することが新型コロナ流行に伴う移動制限によりできなかったため. ②新型コロナの影響が予測しがたい事態となったことから,ケーススタディを①の聞き取り調査だけではなく質問紙調査によっても実施するという方針転換をしたところ,その実施とデータセット構築まではこぎつけたが詳細な分析にはいたらなかったため. ①の調査旅費に使用するほか,②の分析に必要な統計ソフトのバージョンアップに使用する.
|