研究実績の概要 |
今年度は教育組織と研究あるいは教員組織を分離する改組を行った9つの国立大学に所属する教員を対象に実施した質問紙調査から得た1,288名の回答データを分析した.その結果,教育組織が分離されようとも教育活動上の協働は全体的に頻繁に行われていたことや,全体として教員組織への関心は弱まってはいなかった等が分かった. さて,本研究の最大の関心は学校教育法による教授会の審議事項の明確化といった動向が同僚制にどのような影響をもたらしうるかを読み取ることであり,上記調査分析は同僚性の基盤となる組織形態の変化を新たに視野に入れたものだった.けれども,全体としての研究成果を最も端的に示すものは,国・私立大学の学部長および学科長を対象に実施した質問紙調査の分析結果とそれから得た含意であり,『高等教育研究』第25集に掲載した論文で公表している.以下にその概要を記す. 第1に,共同体意識を強めるという点で,分権的教員人事が行われることは得策と主張したい.第2に,同じく共同体構築の点に加えて大学全体の戦略性の点からも,カリキュラムの分権化の重要性を主張したい.第3に,全学的な利益という点で大学経営の分権化はネガティブな影響があることが推察できたが,それは大学経営への教員参加を否定するものではなく,教授会から独立した教員代表の参加が図られていいことを主張したい.第4に,学長等リーダーシップの影響は大きく,広く教員を納得させるリーダーシップだけでなく,目標達成や仕事遂行上の強いリーダーシップにも効用がうかがえたことから,優れた学長等リーダーをいかに育成するかが重要であることを主張したい.
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