研究課題/領域番号 |
18K02712
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
岩野 雅子 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (70264968)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 英語教育 / 複言語政策 |
研究実績の概要 |
国家が教育用語として母語や公用語と文法も標記も異なる言語を導入する社会的実験に踏み切ったとき、人々やその文化にどのような変化が起こるのか。その一例を「国家発展計画2030」を推進し、カザフ語(国語)とロシア語(公用語)の2言語政策から、英語を加えた3言語政策への移行を進めるカザフスタンに見ることができる。3年計画の一年目となる2018年度には、小中高校をはじめとする教育現場でロシア語から英語への転換を迎える2019年を前に、大学のグローバル化(英語化)が強力に推し進められてきている現状について基礎調査を行った。公文書をはじめ、3言語政策に関する資料や論文等を収集し、ロシア語のものは英語に翻訳した。また、アスタナとアルマトイの2都市においてモデル大学とエリート高校を訪問し、それぞれで教員への聞き取り調査を実施するとともに、教室での授業の現場を訪問し、資料や情報を収集した。 計画に示された通り、モデル大学やエリート高校等で開発された手法を、それ以外の学校等に出向いて指導する体制が整えられており、教員へのトレーニングに対するインセンティブも用意されている。これらのトップ大学ならびに学校における執行部や教員全体の意識は高く、組織的にもグローバル化を推進する体制となっていることが確認できた。課題としては、これらを他の学校に広めていく場合、計画の通りに実行できるかである。これについては、聞き取りを行った大学ならびに高校の教員からも問題として認識されていることが確認できた。 上記のことをまとめ、カザフスタンからの研究協力者も交えて、2019年度に開催される日本国際文化学会第18回全国大会の共通論題発表にエントリーを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本国内およびカザフスタンの研究協力者らとともに、ロシア語・英語の文献資料を整理し、研究目的①の「英語や日本語による資料が少ない中にあって、カザフスタンで進行している3言語政策、特にロシア語から英語への移行政策と実行計画・具体的方策等について、大学教育改革を中心に全体像をまとめること」に関する段階をほぼ終えた。 また、研究目的②の「大学教育すべてを英語で行う政府指定のモデル大学(4大学)を中心に、上からの改革を推進するにあたって、どのような仕組みを整備しているのかについて具体的な実践事例や成果等について明らかにすること」については、アスタナとアルマトイの2大学での調査を中心に枠組みを整理した。 当初はモデル大学4つを中心に考えていたが、その後の文献調査により、エリート高校が重要な役割を担っていることがわかってきたため、アスタナとアルマトイの2つのエリート高校での調査を加え、現地調査を行った。カザフスタンのモデル大学ならびにエリート高校、計4校での現地調査により、文献で得た情報と現場での情報を合わせて考察することが可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2019年度は、まず7月初旬に開催される共同発表とそれに続く研究協議を通して、カザフスタンからの研究協力者2名と、本研究者と日本側の研究協力者2名の、計4名の間で、これまでに得た研究成果をまとめて比較考察する作業を行う。 そのうえで、研究目的①で示した「教員個人レベルと、部局や大学全体という組織レベルにおいて、英語・英語文化圏への適応はどの程度進んでいるのかについて異文化理解度・適応調査を行う」ための準備をする。同時に、研究目的②で示した「個人レベル、組織レベルにおける非寛容的要因・寛容的要因を明らかにし、変革への転機を生み出す政策・計画・しくみ・キーパーソンについて聞き取り調査を行う」ための準備をする。1年目で構築したネットワークを使い、これらの具体的計画を立て、2019年秋から冬に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地協力者3名への謝金を予定していたが、モデル大学ならびにエリート高校において謝金は不要ということ、また、その代わりに当初英語で行う予定としていた現地調査については文献収集や準備時点でカザフ語・ロシア語のできる協力者が必要であることの2点がわかった。そのため、現地調査の協力者1名への謝金としたため、残額が生じた。 また、当初は現地調査時に研究協力者等と協議する会議室使用料を計上していたが、すべて大学ならびに高校内で行うことができたため不要となった。
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