国際化やグローバル化、情報化が進む今日にあって、世界的に教育言語の英語化が進んでいる。日本の高等教育(大学)における教授言語の英語化が進んでいるが、そこには大きく2つの課題がある。一つ目は、グローバル人材育成の目標が英語力向上と強く結びつけられ、一部の対象者から広がる様子が見えないこと。そして二つ目は、英語力向上がTOEFLやTOEICなどの英語民間テストの指標に合わせて水準をあげていくように要求されており、日常の学習言語の多言語化からは遠い状況があることである。 一方、中央アジアのカザフスタンではカザフ語・ロシア語・英語による三言語一体化政策(言語の三位一体化政策)を開始し、2030年までにすべての子ども・若者が三つの言語を修得するという目標を立て、グローバル人材育成に取り組んできた。それは、理科系の科目は英語で、国語や歴史等はカザフ語で、ロシア文学等はロシア語でと、授業科目によって3つの教授言語に触れる(その他の民族語が教えられるときもある)というものである。 2023年度に行った調査結果から、一部のモデル大学やエリート学校における学校教育改革では教育成果があがっているものの、当初の政策通りに国内に広がったとは言えない状況にあることがわかった。 カザフスタンの「教育言語としての英語」推進の取組の目的の第一段階(モデル校での実験)では優秀な生徒・学生を育成し、そういったモデル校への進学を目標とする子どもたちが出ている。しかしながら、モデル校の授業形態をそのまま国内に広く周知し、研修を通して地方の人材(教員)育成を試みたが、リソース(予算、教育資源等)の不足から、十分な成果が上がっているとはいえない現状にある。さらに、三言語一体化政策は終了し、そのレガシーの中で地方の学校教育が進められ始めている状況にあることもわかった。
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