研究課題/領域番号 |
18K02714
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
横松 力 東京薬科大学, その他部局等, 名誉教授 (70158369)
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研究分担者 |
三浦 典子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (30218036)
片野 修一郎 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50814711)
緒方 正裕 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90317082)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 直接評価 / 間接評価 / 成長パターン / 評定平均 / 高校ランク / 学業成績 / 汎用能力 |
研究実績の概要 |
薬学部は、これまで、薬を創る科学(創薬科学)や医療現場で薬を安全に使う科学(医療薬学)などから構成される「専門薬学」と、その基盤となる様々な自然科学から構成される「基礎薬学」を4年間で教育してきた。2006年度に、薬学部は医療薬学に関する教育を充実し、高度化する医療技術の進展に対応できる薬剤師の養成を目的として、6年制教育に移行した。本研究は、以上の教育制度改革に伴う様々なアウトプットデータを収集し、制度改革が薬学教育に与えたインパクトを多面的に解析することを目的としている。 本年度は、2017年度薬学部卒業生の「教学データ」と「自己評価データ」を学生番号で紐付けた統合データベースを作成した。「教学データ」は学内で保有している学業成績など、卒業生の直接評価データである。「自己評価データ」は、卒業時のアンケート調査から得られる間接評価データである。以上の統合データベースを利用して、「入学前の学修」「学びの熱心度」が「国家試験の合否」「大学での学業成績」「汎用能力の獲得」などにどのように影響しているかを分析し、以下の知見を得た。 1) 学業成績に基づく成長パターンの解析から、国試合否には、大学入学時の偏差値よりも、4年修了時の偏差値が大きく影響する。2)高校卒業時の評定平均値は大学での学業成績に大きく影響するが、高校ランク(格付け)の影響は小さい。3)専門講義への熱心度は、学業成績を高める要因となるが、チームワーク、問題解決力、批判的思考、粘り強くやり遂げる力などの汎用能力を高める要因としては弱い。4)外国語授業への熱心度は、学業成績よりも汎用能力を高める要因として働く。5)「直接評価」と「間接評価」のズレの解析から、格付けの低い高校の出身者は、自身の学業成績を実際より低く自己評価する傾向がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「薬学教育の制度改革が、教育と研究活動の現場にどのようなインパクトをもたらしたか」を問うのが本研究の目的である。その問いの解明にあたって、以下の四つの分析項目を設定し、制度改革のインパクトを多面的に検証している。 入学志願状況に与えたインパクト:「薬学部は受験生にとって魅力的となっているのか」に着目し、薬学部の志願者推移などを主に収集・分析している。また、6年制度に伴う薬学部の乱立および少子化が、志願者の学力に及ぼす効果などを入学後のプレースメント試験の結果などを経年追跡して分析している。卒業生の学力に与えたインパクト:「6年制薬学部卒業生の学力の強みと弱みは何か」に着目し、全国レベルおよび本学レベルで、薬剤師国家試験の専門分野ごとの得点率の平均などのデータを、6年制度開始時を基点として前後10年間分収集し、制度変更に伴う学力推移を解析している。就職・進学状況に与えたインパクト:これまで、修士課程修了者は、薬剤師として病院、薬局で活躍する者以外にも、製薬会社で臨床開発や創薬研究に携わる者、衛生研究所で公衆衛生に携わる者など多岐に亘る業種と職種で活躍していた。このような多様性は、修士課程修了者と同等の学力と知識が求められる6年制卒業生にも当てはまるのかなどを検証している。研究に与えたインパクト:6年制度の導入に伴い、教員の教育負担は増大し、教員が研究に当てるエフォートは減少した。また、修士課程の大学院生が担っていた研究は、6年制の卒論生(4-6年生)が担うことになった。さらに、6年制と連結した博士課程での研究結果は、臨床と直結させることが求められるようになった。以上を踏まえて、本項目では、分析の視点として「研究実績と研究内容はどのように変化したのか」に着目し、日本薬学会での研究発表数、科研費の採択数と領域などを収集・分析する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2018/2019年度の成果を踏まえて、「6年制薬学部卒業生の強みと弱みは何か」を分析の視点に位置づけて継続的に研究を展開する。更に、教学データと卒業時調査のデータを統合したデータベースを解析して、6年制薬学教育のインプット変数とスループット変数が薬学教育6年制卒業生のアウトプットデータに与えたインパクトを解明する。また、当初の計画に従って、分析の視点を「薬学部は受験生にとって魅力的となっているのか」「失った就職先、新たに獲得した職種はあるのか」にも注目し、解析を進めていく。最終年度となることを踏まえて、これまでの研究のまとめにも努力する。一部の研究成果は、教育現場のスタッフと共有し、新しい教育システムとしてフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、研究代表者と研究分担者は、それぞれ、学会出張を3回行うことになっていた。しかし、年度末に行われる予定だった学会が、新型コロナウイルスへの対応で中止となった。そのため、出張を取りやめ相当額の繰越額が発生している。
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