研究課題/領域番号 |
18K02722
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岸田 由美 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (80334754)
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研究分担者 |
S Kampeeraparb 名古屋大学, 国際開発研究科, 講師 (90362219)
藤生 慎 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90708124)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外国人留学生 / 生活行動 / 活動日誌法 / GPS / 地域住民との交流 / アルバイト / ホームステイ / 家族 |
研究実績の概要 |
30年度は研究打合せを2回開催した。9月の打合せでは調査の方法や計画について議論し,行動パターンや地域住民との接触に重要な影響を与える可能性のある留学生の属性を整理し,調査対象者の選定条件を設定した。 その条件に基づき,在留外国人が少ない中小都市郊外に位置する金沢大学の留学生20人と,在留外国人が多い大都市中心部に位置する名古屋大学の留学生15人に調査協力を依頼し,同意を得た上で,本研究課題の調査の第一段階である2地域における質的調査を実施した。調査協力者は,11月末から12月に,地域毎に設定された1週間において,(1)自身の基本属性や地域の日本人との接触状況についての自己評価,日本での生活に関する満足度を尋ねる質問紙への回答,(2)1日24時間×7日間の活動日誌の記録を行った。加えて,各大学それぞれ15人は,(3)GPSウォッチの装着による行動の時空間的データの提供も行った。 回収した調査票及びデータの集計や基本的な分析を行い,3月の第2回研究打合せで結果を報告するとともに,集計結果の解釈や,より詳細な分析の方向性についての意見交換を行った。日本人住民との付き合いが生じる場面としては,アルバイト先,子どもの学校園,言語・文化交流プログラム(国際交流イベント,ホームステイ,奨学金財団のイベントなどを含む),近所づきあいが主要なもととして確認されたほか,宗教を通じての出会いも確認された。個人的な付き合いに発展している事例は,ママ友,アルバイト先の上司や同僚,ホストファミリーとの間に認められ,特に,ホストファミリーとの間に親密で持続的な関係が認められた。この結果について詳細は,8月に開催される世界教育学会(WERA)東京大会で発表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
30年度は金沢と名古屋での質的調査を実施し,全国調査の調査方法を開発する下地となる,地方と都市双方をカバーする,留学生の生活行動や地域住民との接触のパターンのデータを得ることを課題としていた。計画通り調査を実施できただけでなく,当初予定していなかったGPS端末による行動把握調査も追加することによって,より正確かつ緻密なデータを得ることに成功した。留学生の生活行動を時空間的に把握しようとした研究は少ない上,GPSを利用した研究は本研究が初めてであり、その成果は多くの学術的関心を集めるものである。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は,全体での研究打ち合わせを2回開催する。1回目の打ち合わせでは、30年度に実施した調査結果の分析を深め,留学生と地域住民の接触に影響を与える要素(属性や行動など)を類型化する作業を行う。また,GPSによる調査結果では,地下鉄など公共交通が発達した大都市(名古屋)と,そうでない地方(金沢)では移動方法と行動範囲に差が見られたほか,行動パターンの多様性にも傾向が見られた。それらが留学生の生活行動にどのように影響しているか分析と考察をすすめる。その成果を8月のWERA東京大会で発表する。 秋以降は、それまでの分析結果や議論に基づいて、オンラインでの量的調査を効果的に実施することが可能な調査票の原案を代表者と分担者の藤生が作成し,第2回打合せで最終案を完成させる。研究代表者及び協力者が幹事を務める国立大学留学生指導研究協議会会員に協力を呼びかけることによって全国各地の多様な大学の留学生から回答を得た上で全国調査を実施し、地域や留学生それぞれの特性に起因する留学生活の傾向の把握を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
名古屋大学で得られた調査協力者の数が計画を下回ったことから,名古屋大学に配分した分担金(謝金分)に余剰が生じた。一方,GPSデータの収集を調査内容に追加したことから,集計・分析作業に必要な謝金(藤生分担金を予定)は増加した。代表者と分担者に配分した予算の使途について全体で調整し,調査に要する消耗品等の購入にも充てたが,ごくわずかに残額が生じた。GPSデータの詳細分析は次年度まで継続することから,次年度の助成金と併せて使用する。
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