研究課題/領域番号 |
18K02722
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岸田 由美 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (80334754)
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研究分担者 |
S Kampeeraparb 名古屋大学, 国際開発研究科, 講師 (90362219)
藤生 慎 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90708124)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外国人留学生 / 国立大学 / オンライン調査 / 交友関係 / 近所づきあい / 都市と地方 / 地域への愛着 |
研究実績の概要 |
全国各地の国立大学で学ぶ留学生を対象として、大学内外で得ている交友関係や留学経験の評価を尋ねたオンライン調査(2019年12月~2020年2月、n=662)結果の分析と成果のとりまとめを行った。 調査内容には、諸属性の他、都市環境、ホームステイ経験、1日を過ごす場所と時間、対人接触量、留学先で得ている交友関係、留学経験の評価が含まれる。交友関係については、相手を日本人、同国人、他国人に分けた上で、①大学教職員、②学生、③国際交流イベントや組織で知り合った人、④近所の人、⑤アルバイトで知り合った人、⑥子どもの教育福祉施設のスタッフ、⑦他の保護者、⑧ホストファミリー、⑨宗教施設で知り合った人、⑩よく行くお店や施設で知り合った人、⑪その他、の11カテゴリーで付き合いの有無や親密度を尋ねた。留学経験の評価については、大学の教育研究環境や生活環境への満足度、日本人・同国人・他国人との交流の程度、被差別経験の有無、地域社会への愛着、居住地や日本国内での就職希望、日本留学経験の総体的な評価など18項目について尋ねた。 その結果、学外の日本人と個人的に連絡をとる以上の親しい関係を持っている者は、ホームステイやアルバイト経験者に多かった。交流イベントは接点としては機能しているものの、個人的な付き合いに発展する事例は多くはない結果であった。地域への愛着につながる交友関係としては、近隣日本人住民とのつきあいが抽出された。子どもと同居する者は近所づきあいが活発になり、地域とのつながりが強くなる傾向が確認された。子どもがいない場合全体に近所づきあいは少ないが、大都市よりも小都市や田舎の方が、近所で世間話をするような関係を持ちやすいことがわかった。近所づきあいは、留学生にとっての地方暮らしの魅力、地方都市にとっての留学生定着への鍵となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、通常の研究活動が行えない期間があったり、調査結果の共有や意見交換を、研究会で集中的に行うのではなく、メールやWeb会議で行うようになった結果、分析に予定よりも多くの時間を要した。しかし最終的には、全国調査結果から本研究課題にとって興味深い知見をえることができ、その成果を論文3本(採択1本、審査中2本)にまとめて投稿することができた。成果発表を計画していた国際学会が延期、発表者募集停止となったため、全国調査結果の国際的な発信については次年度に延期せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
審査中の投稿論文2本の審査結果に応じて論文の修正を行うほか、平行して、調査結果をまとめた報告書を作成する。特に組織的に協力してもらった大学には、それぞれの大学の留学生受入れ環境整備や支援に役立ててもらえるよう、当該大学の結果だけを取り出した調査結果もあわせて作成して送付する予定である。国際学会については、2022年3月末にバンクーバーで開催予定(現段階では対面で開催が計画されている)のAPAIEを第一候補とし、発表申込を行う。その他、オンライン開催の国際会議への参加や、国内の国際教育関係会議での成果報告も、機会があれば積極的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により県をまたぐ異動が制限されたため、研究グループ全体の打合せはオンラインやメールで行い、旅費を使用しなかった。国内学会もオンライン開催となったため、旅費を使用しなかった。成果発表を予定していた国際学会も延期、発表者募集停止となったため、英文校閲費用や会議参加費、海外旅費の使用がなくなった。20年度が最終年度であったが、研究期間を延長し、21年度に国際学会での成果発表を行う。ただし、オンライン開催等で21年度にも旅費の相当額が不要となった場合は、調査報告書の内容や発行方法、配布先を充実させるなど、研究成果の還元方法を工夫し、そのために予算を使用する。
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