本研究課題はわが国の1950年代における私立大学の経営について、各私大の個別データとともに、私大をめぐる政策環境、および私大経営にとって極めて重要な条件である学生の進学行動の3側面から検討することを目指すものである。戦後占領期と高度経済成長期の間にはさまれたといえるこの時期の私立大学の経営に関しては、本格的な先行研究は皆無と言ってよい状態にあり、またそれに関わる基本的な統計データも十分には整理されていない状況にある。本研究はそのような研究の空白を埋めるのみならず、その後の高等教育の大拡張の時代を準備した時期とはいかなるものだったのかを、敗戦後の混乱から経済成長への社会変動期のなかに 私立大学を位置づけ、さらにはこれまでの申請者による戦間期・戦時期・戦後占領期の私立大学研究に関する知見と合わせて、長いスパンで明らかにすることを 目的とした。具体的には、個々の私立大学にかかわる沿革史や量的データなどの収集をおこなうのみならず、私立大学団体の資料、さらに政府の私立大学政策関連の資料等の収集をすすめた。加えて、私大経営の全体像をみるには、高等教育以外の教育機関等の設置の状況も無視することはできず、それらの教育機関もふくめた法人全体に関するデータも収集し分析をおこなった。 以上のデータは、データベースとしてまとめている。それらのデータから、現時点では、私立大学間でかなり多様な経営行動がみられるということが改めて明らかになっている。 他方で、私立大学団体に関しては、さし当たりはそれらの団体が刊行する機関誌等の収集をすすめた。とくに日本私立大学連盟の機関誌の調査をおこない、各記事内容についてのデータベース化をすすめた。それら機関誌からは、私立大学自体にかかわる動向のみならず、当時の政府と私立大学関係に関する有用な情報が得られることも明らかになった。
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