本研究は,大学組織変革の促進要因と阻害要因をミクロ(個別大学別)とマクロ(国公私セクター別)の両側面において,明らかにすることを目的としている. 2023年度は,東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センターの「大学の教育マネジメントに関する理事・副学長調査」(質問紙調査.2020年2月実施)の調査データを分析対象として,教育担当理事・副学長職がどのように教育改善や改革を進めているかを分析した.分析では,理事・副学長の考え方や業務の仕方をもとに執務スタイルのタイプ分けを試みた.その意図は,夏目らの先行研究によって教育担当副学長は調整型であることがわかったが,調整型と一口に言っても内実は様々であると仮定し,教育改革を実行するリーダの理事・副学長の執務スタイル別に分析することによって,改革の進捗やマネジメント体制などに違いが生まれるのではないかという仮説を検証するためである.同時に,設置者別や大学規模,設置学部などの大学属性によって,教育担当理事副学長職の職務内容などの差異の有無があるか,差異があるならどこにあるのかも検討する.これらのリーダの執務タイプごとに現状認識,課題感,業務遂行などにどのような違いや傾向があるかを明らかにすることによって,教育改善や改革の実行の際に,何らかの実践的含意や有益な視点を得ることを試みた. 分析途中であるが,教育上の課題認識は,理事・副学長の執務スタイルのタイプ別に差はほぼ出ず,大学の属性別に差が出る結果となった.つまり,大学の課題・問題認識は,教育担当理事・副学長の執務スタイルよりも,大学の設置形態,大学規模,設置学部別の分析で差が出る結果となった.
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