最終年度は中国の研究大学を訪問してコロナ禍下の学修支援の実態を調査する予定であったが、渡航にはビザが必要になったうえ、渡航費用は高騰し、科研費の残高での渡航は困難になった。また諸事情から中国の大学が調査訪問に対してきわめて懐疑的であり、大学の許可を得ることもかなり難しくなった。その結果、国内調査と文献調査に転換し、長崎大学の多文化社会学部を訪問調査し、あわせて本科研テーマに適合する諸文献を集めることに注力した。本科研費を使用した研究成果については、すでに中間報告として『「大学教育と社会」ノート―高等教育論への誘い―』(学文社、2020年)にまとめたが、それを引き継ぐ形で、研究を進めた。ことに日本に関する調査については、濱中淳子氏を研究代表者とする科学研究費による研究と相互に連関させながら研究を進め、2024年秋に濱中淳子・葛城浩一編(勁草書房)として刊行する予定である。この共同研究においては学生文化論の視点から学習行動を探るということがメインテーマであったが、山内は「中堅私立大学」における社会科学系学生の学習行動を担当した。これは本科研費による研究のテーマとはややずれる面があるけれども、参照軸として研究大学の学習行動を引き合いに出し、議論する点で深く関係していると言える。オーストラリア、中国、香港への訪問調査は、引き続き継続して行う予定ではあったが、上述の理由のため2020年度の中間報告(文部科学通信)をもって終了した。
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