国内の大学におけるハラスメント相談対応システムの実態について、定量調査と質的調査を実施した。定量調査については全国の大学(短期大学、大学院を含む)1086校に調査票を送付し、275校から回答を得た(回収率25.3%)。 1,規則・委員会の設置状況:ほとんどの大学が一連の法整備を受けて、防止規則が制定されており、9割が法人もしくは大学全体で対応する委員会を設置している。しかし、そのうちの4割は事案発生時のみの開催となっており定例化はしていない。委員会に弁護士などの学外者を入れている大学は2割弱であった。 2,相談窓口・相談員:学内に相談受付窓口を置く大学がほとんどだが、学外相談窓口のみや窓口を置いていない大学もわずかにあった。しかし、専用の面談室を置く大学は2割弱であった。相談員については、非常勤も含めてハラスメント専任の相談員を置く大学は1割強で多くが学内の教職員による兼任の相談員で対応していた。 3.相談対応:ハラスメント相談現場における問題解決の方法のうち、行為者への注意・警告を行う「通知」や当事者の関係調整や環境調整、行為者を引き離し、行為者への説諭、謝罪などを行う「調整」を事実上実施している大学は8割にのぼり、「介入モデル」が一定程度浸透している。ただ、「通知」や「調整」の介入前にハラスメント認定を条件としている大学が4割弱あった。これは介入モデルがもつ被害抑制や早期解決の機能を十分に生かしているとは言いがたい。ハラスメント認定のための調査では、公平性の確保や専門的手法を得るために調査委員に弁護士等の学外者を入れている大学が6割弱あった。調査自体を外部委託している大学は3%とわずかだった。結論までの期限を設けていない大学が5割強と比較的多かった。 4.専門相談員の確保、他大学との情報交換、意識啓発や効果的な研修などが課題と考えられている。
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