本研究は、重度脳障害児の表出行動の生起時の脳活動について、携帯型のNIRS装置による脳血流動態の計測を行い、重度脳障害児の表出行動に伴う脳活動の経時的変化の負荷を解明することを目的としている。 本年度は、重度脳障害児への測定環境や課題設定の予備的な検討として研究計画の一つである「活動負荷に関する計測デザインの検討」に関して、大学生20名程度に関するデータを収集し分析した成果について、第39回日本生理心理学会での学会発表を行った。また、「重度脳障害児事例のコミュニケーション場面に関する実践的検討」については、昨年度データ収集を行った1事例を分析し、行動上で評価可能な表出行動と比較して、心拍による期待反応の生起では、脳血流動態の変化が少ないことが確認された。さらに行動上評価可能である表出行動が体の複数の箇所で現れる大きな応答ほど脳血流動態の変化が大きくなるといった関連も示された。また課題遂行の回数の増加と課題呈示前の脳血流動態のベースラインの変動幅の減少の関連が確認でき、課題遂行に伴う脳血流動態の継時的変化も認められた。この研究成果の一部を第46回日本重症心身障害学会で発表を行った。 昨年度に続いて本年度も新型コロナ感染の拡大により、研究対象校におけるデータ収集ができず当初予定していた重度脳障害児事例数のデータ収集は行えなかったが、1事例について複数回データを収集でき、一定程度の知見が得られたため研究を終了した。
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