研究課題/領域番号 |
18K02755
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
江田 裕介 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00304171)
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研究分担者 |
武田 鉄郎 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50280574)
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60346327)
竹澤 大史 和歌山大学, 教育学部, 講師 (80393130)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ICT / 遠隔授業 / 支援技術 / インクルーシブ教育システム / 教員研修 |
研究実績の概要 |
特別支援学校や特別支援学級では、障害の種類や程度による分離や、障害のない児童との分離など、教育環境の偏りが生じやすい。また訪問学級や病院・施設内の学級のように集団の保障が難しい場合がある。本研究では、障害のある児童の学習環境にコンピュータ等の情報機器を導入することで、コミュニケーションや学習活動における制限を改善し、交流教育や共同学習を促進することを目的とする。また、物理的に離れた学びの場を情報ネットワークで結び、心理的、教育的な統合を図り、インクルーシブ教育システムの拡充を進めるものである。 2020年度は、COVID-19の世界的な感染拡大の影響によって、図らずも遠隔授業の必要性が高まり、学校におけるICTの利用が急速に拡大した。こうした状況と本研究のテーマが合致することから、研究協力校における実践例の報告数が増え、地域の教育現場における研究成果の活用が進んだ。重度・重複障害を有する肢体不自由児の学習支援では、視線入力装置を利用したコミュニケーション援助の方法が定着し、地域の特別支援学校4校で実践研究が行われ、成果報告がまとめられた。また知的障害や発達障害を有する児童におけるタブレット型情報端末を利用した文字学習や、グラフィックシンボルを用いた対話の援助について、児童の発達段階や認知的な特性に応じた効果的な指導の在り方が検証された。 特別支援学校では在宅学習が長期化したことにより、オンラインによる遠隔授業の実践が進み、従来訪問学級の授業研究で蓄積された研究成果が活かされた。一方、教員による直接的な介入が困難なオンライン授業では、保護者の介入が必要となるため、特別支援教育に独特な遠隔教育の課題が明らかになった。保護者の関わりを配慮した新たな授業モデルを構築する必要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
地域の特別支援学校、特別支援学級等の研究協力校における実践研究の成果が豊富に蓄積され、周辺の学校や学級においても活用が拡大されている。研究協力者として授業研究に取り組んできた学校の教員は、現在では地域の指導的な人材として、教員対象の講習会や研修会を担っている。 研究協力者で組織する「ICTを活用した特別支援教育実践交流会」は、今年度7回の事務局会議を開催するとともに、研究成果の公開と普及を目的としたオンラインの教員研修会を2回開催した。COVID-19の感染拡大の状況下で、地域の教育現場のニーズに応えて、教員研修のテーマは「新型コロナウイルス対策状況下におけるICT活用の可能性」とし、学校の抱える課題についても把握に取り組んだ。 これまでの取り組みをまとめ、研究代表者と研究協力者で3編の論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
地域の研究協力校における3年間の実践研究の成果を総括して、本研究費の助成により啓発のための報告冊子『特別支援教育におけるICT活用と遠隔授業の実践』を刊行予定である。また同冊子の内容の電子版をオンラインで公開する。 現在急速に進展しているオンラインの遠隔授業については、今年度の取り組みから、特別支援教育において独特かつ多様な課題があることが明らかになった。特に特別支援学校に在籍する重度の障害を有する児童生徒は、在宅の状態で行われるオンライン授業では、教員による直接的な介入が不可能であるため、保護者に過度の負担が生じることや、保護者の関わり方を計画的に設定して配慮しないと十分な効果を挙げられないことが示された。このことから、次の研究課題として、特別支援教育における遠隔授業のモデルを検討していくことの必要性が示された。
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次年度使用額が生じた理由 |
地域の研究協力校における実践研究の成果を総括し、本研究費の助成により、啓発のための資料として報告冊子『特別支援教育におけるICT活用と遠隔授業の実践』を発行予定である。COVID-19の感染拡大により、各学校での授業研究等の進度に遅れが生じたため、成果報告のとりまとめの時期を延長し、冊子の印刷、発行が次年度に延期されたことによる。
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