• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

行動障害を示す自閉症へのICTを活用したペアレント・トレーニングの開発と検討

研究課題

研究課題/領域番号 18K02756
研究機関鳥取大学

研究代表者

井上 菜穂  鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (50748845)

研究分担者 井上 雅彦  鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252819)
式部 陽子  奈良教育大学, 特別支援教育研究センター, 特任准教授 (20737431)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード発達障害 / 自閉スペクトラム症 / ペアレント・トレーニング / 行動障害 / ICT / 支援者養成
研究実績の概要

自閉症スペクトラム(以下ASD)の行動障害については、強度行動障害や虐待との関連も指摘されており、学齢期以前の早期介入がその予防的手段として求められている。特にペアレント・トレーニング(PT)はASD の行動障害の治療効果について有効性が期待されている。しかしながら時間制約や地域事情等でPTが受けやすい状況にない家庭もある。またPTを地域に実装していくためには支援者を養成し、継続的にアシストできるシステムづくりも課題である。そこで本研究では行動障害のあるASD児を対象としたICTを用いたPTプログラムの開発をおこない、それを活用した地域実装システムを構築することを目的として研究をおこなった。
2年目の研究は、昨年度開発したICTを使用したPTの試行をおこなった。対象はASDの診断のある児の母親2名であり、いずれも何らかの行動上の悩みを抱えていた。いずれの児も幼稚園へ通っており、担任教諭がプログラムに参加し、動画視聴をおこなった。プログラムはスクリーニング期と12週間の介入期から構成され、6回の動画によるレクチャーに加えて、observationアプリを使ってスマートフォンで設定課題の記録をとったり、グラフを作成したりすることで、研究スタッフと家庭との双方向のやりとりをおこなった。プログラム前後にPSI育児ストレスインデックス、ベック抑うつ尺度(BDI)、感覚プロファイル、SDQを用いて評価をおこなった。またobservationアプリの記録の変動とPT動画中のテストの正解率の変化についても評価をおこなった。いずれも事前と事後において改善が認められたことから、本プログラムの有効性が確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度作成したペアレント・トレーニングプログラムについて、プログラムの効果やICTの不具合などを確認するために、試行的にプログラムの実施をおこない、その効果を確認できた。そのことで3年目の本格的なPT施行へとつなげることができると考えている。保護者の動画視聴においては個人のスキルの差が大きく、サイトに接続するまでのフォローを丁寧におこなわないといけないことを確認し、プログラムの修正をおこなった。アプリの使用においては慣れてくるとスムーズに記録をつけることができ、PTプログラムに導入可能なことが確認できた。また担任教諭もプログラムに参加する試みをおこなったことによって、最終年度の支援者養成にむけて基盤を構築できたと考えている。

今後の研究の推進方策

3年目は先行介入群、遅延介入群にわけて、作成したPTプログラムの本格的な実施と効果検証をおこなう。同時に支援者フォロー体制の確立を目指す。従来のペアレント・トレーニングにICT技術を融合させることで、個別化に対応し、かつセッション時間の減少による参加負担の軽減、遠隔による支援者フォローを可能にすることで、地域実装と定着が期待できると考えている。介入前後に育児ストレス尺度(PSI)、抑うつ尺度(BDI)、感覚過敏性を測定する尺度(感覚プロファイル)、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)を用いて、質問紙評価をおこなう。加えて、動画の視聴状況、アプリの記録の変動、動画中のテストの正解率等を総合的に分析をおこなう。あわせて支援者を含めた支援体制の構築へとつなげていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

ペアレント・トレーニングをおこなう際に参加者および担任教員や園職員と直接面談をおこない聞き取りをおこなう予定であったが、コロナのため直接面談を避けてオンライン面談に切り替えた。その結果、次年使用額が生じてしまった。コロナが落ち着いた際に再度園訪問をおこないたいと考えているため、その際の交通費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 家庭生活での工夫2020

    • 著者名/発表者名
      井上雅彦
    • 雑誌名

      そだちの科学

      巻: 34(4) ページ: 75-78

  • [雑誌論文] 行動上の問題に対する行動記録アプリケーション“Observations”の開発2019

    • 著者名/発表者名
      井上雅彦・中谷啓太・東野正幸
    • 雑誌名

      行動分析学研究

      巻: 34(1) ページ: 78-86

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Assessments and Interventions to Address Challenging Behavior in Individuals with Intellectual Disability and Autism Spectrum Disorder in Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Inoue M
    • 雑誌名

      Yonago Acta Medica

      巻: 62(2) ページ: 169-181

    • DOI

      10.33160/yam.2019.06.001

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 強度行動障害の現状と課題を踏まえた支援のポイント2019

    • 著者名/発表者名
      井上雅彦
    • 雑誌名

      実践障害児教育

      巻: 47(7) ページ: 10-11

  • [雑誌論文] 「問題行動」の背景にある感覚・運動特性-機能的アセスメントに基づくアプローチ-2019

    • 著者名/発表者名
      井上雅彦
    • 雑誌名

      心の科学

      巻: 207 ページ: 49-52

  • [学会発表] Question-answering training of the past activities for children with autism spectrum disorders (2) :Training of answering behaviors on What-type questions and Yes/No type questions.2020

    • 著者名/発表者名
      Naho Inoue & Masahiko Inoue
    • 学会等名
      Association for Behavior Analysis International
    • 国際学会
  • [学会発表] Question-answering training of the past activities for children with autism spectrum disorders (1) : Training of answering behaviors on What-type questions2020

    • 著者名/発表者名
      Masahiko Inoue & Naho Inoue
    • 学会等名
      Association for Behavior Analysis International
    • 国際学会
  • [学会発表] 発達障害児を対象とした療育指導者育成プログラム2019

    • 著者名/発表者名
      藤村桃子、北村紗耶香、足立みな美、井上菜穂、井上雅彦
    • 学会等名
      日本行動分析学会第37会大会
  • [学会発表] Development of Behavior Record Application, “Observations,” for Behavior Problems2019

    • 著者名/発表者名
      Masahiko Inoue & Keita Nakatani
    • 学会等名
      World Congress of Behavioural and Cognitive Therapies
    • 国際学会
  • [図書] 発達が気になる幼児の親面接: 支援者のためのガイドブック2019

    • 著者名/発表者名
      井上雅彦
    • 総ページ数
      188
    • 出版者
      金子書房
    • ISBN
      4760832769

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi