研究課題/領域番号 |
18K02759
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
惠羅 修吉 香川大学, 教育学部, 教授 (70251866)
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研究分担者 |
西田 智子 香川大学, 教育学部, 教授 (00243759)
中島 栄美子 香川大学, 教育学部, 准教授 (70533884)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実行機能 / 学習困難 / 語想起課題 / 心理アセスメント |
研究実績の概要 |
学習につまずきのある児童生徒に対して個の認知特性に即した教育実践を実現するために,認知機能のアセスメントの開発と活用に関する研究を進める必要がある。学習困難児によくみられる認知特性の一つとして,実行機能の弱さがある。本研究では,この実行機能に焦点をあて,実行機能の評価とそれに基づく支援方法を開発することを目的とする。具体的には,①基礎研究として、実行機能の評価方法に関する基礎研究を行うことで検査が反映する認知機能を詳細に分析する。②実践研究として、学習困難児を対象として実行機能評価に基づく支援方法のあり方について個別指導による事例研究を行い,教育指導における教育実践的な有効性について検証する。 2018年度は基礎研究を中心とした。実行機能のなかでも「転換 shifting」について検証する本実験を行うための予備実験を実施した。実行機能を反映する語想起課題の遂行中,時間経過に伴う検索効率の急速な低下現象が頻繁に出現する。この現象と課題遂行中の前頭前野の活性化との関連について検討した。前頭前野の活性化についてはNIRSによる脳酸素代謝変化を指標とした。その結果,時間経過に伴う検索効率の急速な低下現象の安定した出現を確認するとともに,それに随伴して時間経過に伴うOxyHb濃度変化量の増加を認めた。さらに行動指標とNIRS指標の関連性を分析するため,参加者を課題遂行成績の高低で二分して比較した。その結果,遂行成績の高低に関わらず時間経過に伴う検索効率の急速な低下現象は出現すること,低成績者よりも高成績者のOxyHb濃度変化量が多く,その差は課題遂行の冒頭よりも中盤および後半で拡大した。以上より,時間経過に伴う検索効率の急速な低下現象の背後で,検索困難状態から脱するために実行機能が活動し,前頭前野の賦活に繋がっていることが示唆された。成果の一部を論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、生理指標として近赤外分光法による脳血流測定を行う。新たな実験の実施に当たり、本学医学部に設置されている倫理審査委員会に申請手続きを行った。研究代表者が所属する教育学部には倫理審査委員会がなく、立地的にも離れた医学部での倫理審査申請となり、認可を得るために数か月を要している。以上の理由で、計画がやや遅れているが、研究目的の達成を阻害するほどの遅れではない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度については基礎研究を継続する。以下の2つの実験を行う計画である。 基礎研究1:実行機能検査として採用する語想起課題では,前回科学研究費補助金研究で実施した検査手続きを基本的に継承する。この手続きは,小学生や軽・中度知的障害児でも実施可能であり,対象範囲を比較的限定しない手続きである。語想起課題とは,共通属性を有する単語を限定された時間内で可能な限り報告する単語検索課題である。通常,報告された単語の総数が指標となる。課題遂行中の反応特徴として,時間経過に伴い再生数が急速に低下する現象がある。この検索効率の減衰現象は,検索方略の使用すなわち実行機能の関与が時間経過により変動することを示唆する。本研究では,語想起課題に手がかりを切り替えて実行する条件を加えることで,実行機能の諸要因のなかでも「転換 shifting」に該当する要因について検証する。行動指標として総再生数と時間経過による減衰率の2つの行動指標とする。反応とともに課題の前頭葉活動を近赤外分光法により測定することで,行動指標と前頭葉活動の関連性を解明する。近赤外分光法による計測・解析については,この領域で研究実績のある研究分担者と共同して実施する。 基礎研究2:基礎研究2では,標準化検査との関連性を検証することを目的とする。学習困難児の心理アセスメントでは複数検査を組み合わせることが重要であり,実行機能に関わる他検査との関連性を把握しておくことの臨床的意義は高い。そこで計画尺度を含む日本語版KABC-IIとの関連性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験計画に遅れがあり、それに伴って消耗品の購入が少なくなった。次年度には実験の不足分を行うので、本年度の残額はその消耗品費として活用する。
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