全国的に学校におけるがん教育が実施されるようになってきた一方で、がん教育を実施する際に、児童生徒本人が小児がんの当事者である場合、家族にがん患者がいるあるいは家族をがんで亡くしたといった場合に配慮が必要であるとされながらも、具体的にどのように配慮するとよいのかといったことは自明ではない。そこで実際に行われたがん教育の授業でどのような配慮がされたのかを踏まえつつ、どのような配慮が必要と考えられるかを明らかにする。 本年度は。学校におけるがん教育の推進に関わった9つの自治体の協力を得て、がん教育に実際に関わった教員へのアンケートの実施と外部講師として積極的にがん教育に携わっている方に聞き取り調査を実施した。学校でのがん教育を行う際に、がんの当事者である児童生徒に様々な配慮がなされている。がん教育の事前には、保護者へのアンケート、児童生徒への連絡、保健室だよりや通知文等が活用されている。ただし、がん患者やがん経験者の不利益になる内容ではなく、学校教育として必要と判断して行ったため特に配慮しなかったとする例や小児がんの児童の保護者からは配慮の必要がないとのアンケート回答があり特に配慮をしなかった例も認められる。授業の開始時に途中で退席してもよいことを示すことも多く行われている。また、がん教育を受けることによって授業中や授業後にがんの当事者であることを知らせてくる場合があり、事後に個別に話を聞くといったフォローアップも有効であった。さらに、オンラインを利用して、個別に別部屋で受講することも可能であることが明らかとなった。
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