研究課題/領域番号 |
18K02767
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
長谷川 由香 佛教大学, 保健医療技術学部, 准教授 (40614756)
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研究分担者 |
早川 りか 武庫川女子大学, 看護学部, 准教授 (50737575)
井上 寛子 関西看護医療大学, 看護学部, 助教 (60803898)
高間 さとみ 鳥取大学, 医学部, 講師 (90588807)
小嶋 理恵子 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (20404402)
鬼頭 泰子 佛教大学, 保健医療技術学部, 講師 (70433232)
黄波戸 航 佛教大学, 保健医療技術学部, 助教 (40779592)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 協働システム / 協働と離職 / 特別支援学校 / 看護師 / 医療的ケア |
研究実績の概要 |
平成30年度は、「特別支援学校における協働」の概念分析をもとに、インタビューガイドを作成し、インタビューを実施した。 特別支援学校の看護師の離職が問題となるなか、A特別支援学校(以下、A校とする)では看護師の不本意離職者がいない。著者は、看護師と教員との協働のあり方が看護師の定着に大きな影響を与えているのではないかと推測した。 本研究は、看護師の不本意離職者がいないA校での看護師と教員との協働の特徴を明らかにし、看護師の定着と協働の関係について検討し,特別支援学校における協働に関する研究の示唆を得ることを目的とした。A校の看護師5名に半構成的面接を行い質的記述的に分析した。 特徴として1)看護師は、重症心身障害者施設での経験を持ち看護師間のつながりが強い。2)医療的ケア導入時には看護師は積極的な提案をし、現在は求めに応じてアドバイスをする。3)教育と看護の価値観の対立が生じた場合は関係性を重視し、軋轢は避ける。4)看護師は慣習化された医療的ケア以外の業務も行う。5)教員は医療的ケアに関わらない。6)医療的ケアに関わる重要な決定事項で看護師の意見は考慮されなかった。7)他職種との情報交換は密にとれている。7) 看護師全員が協働できていると感じているがあげられた。 A校では一定の協働はなされているが、A校の看護師は教員らの求めに応じてアドバイスしていることや教育と看護の価値観の対立が生じた場合は教員との関係性を重視して軋轢を避ける傾向にあることから、看護師の「協働」に対する姿勢は受動的な部分も多い。「協働」に対する看護師の受動的な姿勢が,逆に教員との良好な関係につながり、人間関係のストレスが少ないことが、看護師の定着に影響している可能性が高いことが推察される。今後も様々な事例を通して,看護師と教員の「協働」のあり方を検討していく必要がある。(38回日本看護科学学会発表)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の職場の変更や介護、共同研究者の体調不良や介護等で、時間が取れず研究に関する会をもつことがあまりできなかった。全研究者がネット上での会議ができる環境もまだ整えることができなかった。そのため、質的研究の信頼性確保のための確認作業が遅れてしまった。今後は、環境を整え、ネット会議もとりいれていく予定である。 また、協働をシステムとして捉えなおすために、看護学に関連した文献だけでなく、経済学・社会学の視点から組織理論やシステム理論、チーム理論などについて文献検討していく必要があり、研究者それぞれが内容を理解し整理するのに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究では協働に関連する項目として看護師と養護教諭や教員との人間関係、専門性や役割に対する相互理解、情報共有等が抽出されている。これらの文献は、協働の定義を明らかにはしていないが、その結果から協働を人と人との関係性から捉えることを主眼としていることが伺える。協働は、確かに人と人との関係性のなかで生じる部分も多いが、人と人との関係性だけに限定してしまうと、職種間の関係性向上に向けた対策に偏る恐れがある。特別支援学校はそれぞれが異なる状況にある一つの組織体系を形成している。著者は、協働をシステムとして広く捉えなおすことで、これまでとは異なる課題が見えてくるのではないかと考える。しかし、先行研究では、特別支援学校における協働をシステムとして捉えた論文は見当たらない。システムとは、相互に影響しあう要素から構成される、まとまりや仕組みの全体である。 今年度は、看護師の語りから見えている特別支援学校での協働の構成要素を抽出し、協働システムの枠組みを提案したい。協働システムの枠組みをつかって、個々の事例の課題を明らかにするとともに、協働システムの枠組みが妥当であるか検討していく。 次年度は、全国の特別支援学校を対象に協働システムの枠組みをもとに作成した質問紙と看護師の職務満足等関連する質問紙を用いて調査を実施し、その関連性を明らかにするとともに協働システムのなかのどこに問題が生じていると考えられているのかを検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
【当該助成金が生じた状況】共同研究者との研究会議の開催回数や参加できた共同研究者も少なかったことから、①会場賃貸料金 ②交通費の支出が少なくなった。また、研究が予定より若干遅れており、研究発表や論文発表ができず③学会旅費 ④論文投稿のための必要経費などがまだ未使用である。 【翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画】 今後、スカイプを使った研究会議も取り入れ、研究活動を続けていく。そのために必要な機器の準備を進めていく。また今年度は学会発表を3回と論文投稿を2件を予定しているため1年遅れではあるが、助成金を使用予定である。
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