研究課題/領域番号 |
18K02771
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
柴里 弘毅 熊本高等専門学校, 電子情報システム工学系CIグループ, 教授 (60259968)
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研究分担者 |
大塚 弘文 熊本高等専門学校, 企画運営部, 教授 (10223869)
加藤 達也 熊本高等専門学校, 電子情報システム工学系CIグループ, 助教 (10707970)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特別支援教育 / 福祉人間工学 / アシスティブテクノロジー / 分身ロボット |
研究実績の概要 |
申請者らは,障害による物理的な操作上の不利や障壁を工学的立場から軽減し支援を行う「アシスティブテクノロジー」を基軸とした社会実装型の研究を実践している.社会実装とは,研究開発成果を社会で利用・展開して,社会に内在する具体的な問題を解決する取り組みを指す.これまで,高専が得意とする基盤技術を活用し,特別支援学校の重度重複障害クラス,および訪問教育課程の児童生徒のニーズに応える教育教材や支援機器の開発に継続的に取り組んでいる.児童生徒は肢体不自由と知的障害の重複障害があるため,1人につき教諭1名の体制で授業が行われており,教諭と密度の濃い関係を構築できることが特徴である.一方,個々の特性や持てる力が異なるため,児童生徒間のコミュニケーションを持たせる取り組みを頻繁に行うのが困難,社会との繋がりが希薄になりやすいなどの問題を抱えている.この問題解決のため,特別支援学校に通う児童生徒間のコミュニケーション活性化を目的としたプロトタイプロボットを製作した.ARマーカを目標としてビジュアルフィードバックにより移動するプロトタイプが完成した段階にある.ARマーカを用いることで使用場面や環境,認識対象の変更に柔軟に対応することが可能となった.また,ロボットの移動機構にはオムニホイールを使用した.オムニホイールはロボットの姿勢を保ったまま移動方向を変えることが可能で,対象を見失う危険を軽減させることができる.現在は,分身ロボットの知的な移動を実現するため,velocity obstaclesを用いた障害物回避の改良に向けたシミュレーションに着手している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重度の重複障害がある対象者の残存能力により操作が行われるため,ロボットの精細な制御は困難である.そこで,分身ロボットには,一部,自律した動作が求められる.これを実現するために,使用場面や環境,認識対象の変更に柔軟に対応できる「ARマーカ」を用いて環境の認識を行う.また,ロボットの移動機構にはオムニホイールを使用し,モータの制御にはArduinoとモータシールドを採用した.オムニホイールはロボットの姿勢を保ったまま移動方向を変えることが可能である.したがって,分身ロボットのカメラでARマーカを捉えたまま移動が可能となり,対象を見失う危険を軽減させることができる.また,分身ロボットに学習場面に応じた感情や台詞を表示させる機能,音楽や台詞を出力する機能を付加した.これにより,ロボットは生徒の分身であるということを周囲に意識づける効果が期待される.なお,プロトタイプの分身ロボットでは,動作指令に生徒が普段から使用している押しボタンスイッチやピエゾスイッチを用いた.ピエゾスイッチによる入力を移動開始合図として,ARマーカを認識しながらビジュアルフィードバックにより動作する分身ロボットについての基本動作実験は完了している. しかしながら,新型コロナウイルスの感染拡大を受け,対面での研究活動が困難な状況にある.また,特別支援学校は病弱な学生も通っているため,感染症予防の観点から訪問が難しい状態が続いている.現在は,研究室でのシミュレーションを中心に障害物回避アルゴリズムの改良作業を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後,分身ロボットを制御するためのインターフェースとして,視線を利用する方法を検討する.難病の一つであるALSは筋肉が萎縮する病気で,進行すると全身の随意的な運動が困難になる.しかしながら,眼球運動は最も長く残存する機能であることが知られている.視線入力を制御に用いることで,ALSの進行した患者や重度重複障害者でも制御を可能にするインターフェースの開発を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の直接経費と合わせ移動台車を新規購入する計画である.
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