研究課題/領域番号 |
18K02776
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研究機関 | 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 |
研究代表者 |
大崎 博史 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, インクルーシブ教育システム推進センター, 総括研究員 (40359120)
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研究分担者 |
笹森 洋樹 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 発達障害教育推進センター, 上席総括研究員 (40419940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高等学校 / 合理的配慮の提供 / 特別支援教育 / インタビュー調査 / 特別な配慮の必要な生徒 / 校内支援体制 / 研修 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である、高等学校におけるインクルーシブ教育の理念を踏まえた特別支援教育を推進することを目指して、①各高等学校が行う合理的配慮の提供や特別支援教育に関連する研修についての調査及び課題の把握と整理、②研修を企画立案するための校内課把握チェックリスト(試案)の作成、③チェックリストを活用した校内研修プログラム(案)の開発、④研究協力校における校内研修プログラム(試案)の実施と評価を行う予定であるが、平成30年度は、①を中心に各高等学校が行う合理的配慮の提供や特別支援教育に関連する研修についてのインタビュー調査を23校に対して行った。また、インタビュー調査から高等学校が抱える課題等について把握し、今後実施予定の質問紙調査を行う前提としての情報収集を行うことができた。 インタビュー調査を行った意義は、今まで明らかではなかった高等学校における合理的配慮の提供や特別支援教育の現状と課題について把握することができたことにある。具体的には、高等学校に在籍する特別な配慮の必要な生徒の現状(どのような課題があるのか、どのような配慮が必要なのか、合理的配慮提供までのプロセス、配慮の具体例)や、校内支援体制について(校内委員会の有無、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成と活用状況、支援員や外部専門家の活用状況など)、特別支援教育に関する研修の実施について(研修実施の有無、実際に行われている研修、今後必要だと思われる研修)、高等学校における特別支援教育の推進はどのように行う必要があるか等について把握することができた。 平成30年度の研究成果は、次年度以降の研究に繋げるための最初の一歩であり、まずは、高等学校における合理的配慮の提供や特別支援教育の現状と課題について把握できたことが重要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高等学校の合理的配慮の提供や特別支援教育に関連する校内研修について、当初予定していたインタビュー調査の結果に基づいて質問紙調査を作成し、実施するまでには至っていないことから、「やや遅れている。」と評価した。 そのような評価をした理由は次の通りである。計画当初は、平成30年度から通級による指導を実施している学校6校程度から質問紙調査の予備調査的な意味合いでインタビュー調査を行う予定だったが、研究協力者や実際に高等学校で特別な配慮の必要な生徒に関わる教員から6校程度だと全国的な高等学校における特別支援教育に関する課題を把握できないことや、始まったばかりの通級による指導実施校だけのインタビュー調査では、高等学校全体の特別支援教育に関連する課題を把握できないこと等の意見をもらい、インタビュー調査の対象校を通級による指導を実施している学校と実施していない学校を含めて23校に増やして情報収集を行い、そのためインタビュー調査を実施するのに時間がかかり、当初予定していた質問紙調査まで実施することが難しかった。また、その質問紙調査から得られた情報をもとに次年度以降の校内研修プログラムの開発、実施、評価に協力していただける研究協力校を6校程度選定することが出来なかったからである。 しかし、インタビュー調査を充実させたため、高等学校の合理的配慮の提供や特別支援教育に関連する校内研修について多くの情報収集ができた。また、研究に協力していただけそうな学校も同時に探したため、「遅れている」の評価ではなく「やや遅れている」の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策であるが、基本的には、当初の計画通りに研究を推進する予定である。平成30年度にやり残している質問紙調査を早急に実施し、計画を推進していく。具体的には、次のように研究の推進していく予定である。 令和元年度は、平成30年度の計画で出来なかった高等学校における合理的配慮の提供や特別支援教育に関連する校内研修に関する質問紙調査を早急に実施する。調査は、全日制や定時制、通信教育等の課程や普通科、職業学科、総合学科等の学科を考慮して100校程度抽出し、①合理的配慮の提供や特別支援教育に関連する校内研修の実施の有無、②校内研修の必要性の有無とその理由、③研修を企画した背景と理由、④研修の内容等について調査し、研修の現状と課題を整理する。また、調査等から得られた情報をもとに、校内研修プログラムの開発、実施、評価に協力していただける研究協力校を6校程度選定する。(全日制普通科2校、職業学科1校、総合学科1校、定時制1校、通信教育1校の計6校を考えている。)そして、現状と課題に基づき、①特別支援教育を推進するための校内課題把握チェックリスト(試案)を作成し、研究協力校で使用してもらい、その評価を行う。②チェックリスト(試案)を活用しながら、研究協力校への実地調査を行い、研修プログラムを開発するための準備を行う。 令和2年度は、①高等学校における研修プログラムの開発を行う。②開発した研修プログラムの実施を依頼し、その評価を行いながら研修プログラム(試案)のブラッシュアップをはかる。そして、③3年間の研究成果や研究協力校での実践を踏まえ、「合理的配慮の提供と特別支援教育を推進するための校内研修プログラム(モデル案)」を提案する。さらに、④研究成果は報告書にまとめ,研究協力校6校を含めた質問紙調査回答校等へ配布する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費において、研究分担者や研究協力者が所用や悪天候のために実地調査に参加したり、研究遂行会議に参加することが難しかったため次年度使用額が生じている。また、平成30年度に実施する予定であった質問紙調査を実施できなかったために、調査票用紙代や調査票の送付・返信にかかる郵送料、資料整理のための人件費を支出できなかったために次年度使用額が生じている。 次年度は、当初の研究計画に基づいて研究を推進していく予定であり、次年度分として請求した助成金に加え、平成30年度にやり残した質問紙調査や実地調査等についても実施するためこれらの費用は必要である。
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