本研究は、知的障害の児童・生徒の実行機能の特性を把握するための実行機能アセスメントと支援プログラムを開発することを目的とした。実行機能については、MiyakeとFriedman(2000・2008)の更新固有、シフティング固有、共通実行機能の3つのコンポーネントからなる理論に依拠した。 MiyakeとFriedmanの実行機能を測定する課題を参考にiPadで課題実施とデータの収集ができるアプリケーションを作成した。アセスメント課題は、①追跡課題(イラストの標的カテゴリー及びイラストの標的単語を合図刺激に応じて回答)、②文字記憶更新課題(標的刺激である色を合図刺激に応じて回答)、③空間的nバック課題(白い四角形と黒い四角形の位置を合図刺激に応じて回答)、④数字文字シフティング課題(図形とイラストの合図刺激に応じて標的刺激を回答)、⑤色形シフティング課題(イラストの合図刺激に応じて標的刺激である図形を回答)、⑥カテゴリスイッチ課題(イラストの合図刺激に応じてイラストの標的刺激を回答)、⑦アンチサッケード課題 (標的刺激である矢印の方向を回答)、⑧ストップイット課題(図形の標的刺激を音の合図刺激で分類)、⑨白黒課題(白と黒の図形である標的刺激を条件に応じて色を回答)の9課題である。 実行機能アセスメントを用いて定型発達児の実行機能を測定した。定型発達児は、小学校2学年の69名(男子31名。女子38名)で、生活年齢は7歳11カ月から8歳1カ月であった。実行機能の更新固有、シフティング固有、共通実行機能の特徴を明らかにすることができた。 実行機能アセスメントを用いて、知的障害児1名の実行機能を測定した。知的障害児は特別支援学校高等部3年生の男子生徒で、生活年齢は18歳1カ月、IQ58であった。実行機能の更新固有、シフティング固有、共通実行機能を測定することができた。
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