肢体不自由特別支援学校の教職員や児童生徒の保護者にとって、肢体不自由のある児童生徒の介助の身体的ストレスは少なくない。実際、教職員や家族が腰痛を抱えている場合が多い。床やベッドと車椅子間の移乗、自動車の座席と車椅子間の移乗の補助や、トイレ動作や入浴などには介助が必要である。そして子供たちは年々身体的に成長を遂げていく一方、介助量が増えていくという現実もある。そこで本研究は、肢体不自由特別支援学校において、介助者である教職員や家族の健康維持と予防を考慮し、介護時の腰部負担軽減を目指す。その際、ロボットスーツを着用しその効果を生理学的に検討し、実際に使用できる根拠を示し、肢体不自由特別支援学校や家庭での適用につなげることを目的とする。本研究は、肢体不自由特別支援学校の教職員、整形外科や小児科医師、および人工知能グループの3つのチームで共同して実施する。 研究初年度に、筑波大学人間系研究倫理委員会で承認を得たあと、10月にロボットスーツを制作しているサイバーダイン社と契約し、着用のための講習会を受講した職員のみが試用した。本研究で用いているロボットスーツは、ロボットスーツHAL介護支援用腰タイプ(以後、ロボットスーツ腰HAL)である。 その結果、非常に助けになり一度着用するとやめられないと述べる職員もいれば、それほど効果が感じられなかったという職員もおり、一定の傾向が認められなかった。2年目は10名以上の職員が講習会を受講し試用したが個人差があるという結果であった。最終年度は、一人の職員を対象に客観的に心拍数を中心的な指標として、腰HALの使用時と使用していないときの差をABBA法にて順序効果を相殺する実験デザインで測定した。その結果、心拍数においては差が認められなかったが腰HALを用いた方が腰部負担の軽減につながり「全然違う」と主観的には効果が認められたことが判明した。
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