研究課題/領域番号 |
18K02780
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
大鹿 綾 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (10610917)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / 発達障害 / 義務教育以降の実態と支援 |
研究実績の概要 |
これまで幼児期及び小学生期にある発達障害を併せ有する聴覚障害児について実態把握及び支援方法について検討を行ってきた。そこで本研究では、中学生以上を対象として発達障害を併せ有する聴覚障害児・者及び保護者への面接調査と介入支援、福祉・医療機関へ聞き取り調査を通して、彼らを取り巻く現状と課題について明らかにすること、学習、生活を支えるための教育的・社会的支援体制について検討することを目的とする。 研究1年目である本年度は、小学生期に継続的支援を行っていた39組の本人及び保護者に対し連絡を取り、21組より返答を得、そのうち8組に面接調査を行った。 中学生段階では、年齢を重ねることで癇癪が減ったなどポジティブな様子がある一方、環境や学習内容が変わったことにより生活になかなか慣れなかった、学級担任制でなくなったことにより相談相手が減ってしまったなどの意見があった。高校・専攻科段階では、スマートフォンの扱い方、友人関係での課題、周囲の対応や求められるものが「大人対応」になってきたことへの戸惑い、就職に向けての不安が挙げられた。大学生段階では、生活自体は想定以上には安定して送れているものの日本語力の難しさがあること、情報保障環境は学校間で大きく差があること、就職に向けての不安が報告された。就職段階では、障害者雇用枠で就労し、それなりの理解は得られているものの、雑談に加われない、気疲れしてしまい余暇活動に積極的になれない、交友関係が狭いなどの意見が得られた。 ライフステージ毎に課題や求められるものには違いが見られたが、今回の対象者全員が聴覚特別支援学校に在籍していた(している)ことも影響してか、就労に対しては比較的早い段階から課題意識をもっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面接対象者に対してコンタクトを取ることはできたが、予定調整に手間取ってしまい直接会って面接することができた人数がやや少なくなってしまった。この点については次年度以降、できる限り早期に実施する。一方で、コンタクトを取ることができた対象者からは面接だけではなく、今後の介入研究の参加に対しても積極的な回答を得られており、こちらについても研究期間中により多くの回数を重ねるため、早期からの実施を計画している。なお、介入研究への研究協力者として、手話のできるスタッフの確保も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はすでに面接への参加可能との回答を得られている未実施の対象者に対して、日程調整を行い、面接を行う。 また、面接で得られたライフステージ毎の課題を整理したうえで、介入研究を行う。これについては年間5回程度の実施を計画している。介入研究を実施する中で彼らの実態や保護者の願いなどをより詳細に把握し、さらに介入に活かしていくことで教育的効果を期待したい。 また、医療・福祉機関への聞き取り調査を実施する予定である。これを通して就労支援や成人以降の福祉制度等に関わる専門家も研究協力者として介入研究に招きたいと考えている。教育の立場からだけではなく、医療・福祉からの視点と相互に意見交換していくことで聴覚障害および発達障害があっても、それぞれの持つ能力を最大限発揮し、必要なサポートを自ら選択しながら自立的に社会生活が送れるための切れ目ない教育的・社会的支援について提案することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度利用額は5064円であり、端数分である。
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