研究対象地域では緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が断続的に発令され、対面での集団活動の実施は難しい状況であった。そのため、令和2年度の研究結果より効果的であると考えられた少人数のオンライン会議システムを用いた活動等を中心に行った。 中でも、学校を含めてのケース会議は今年度初めて実施に至ったものである。学校からの相談を起点としたケースでは、教科学習では大きな課題はないものの、高校生になり友人関係やSNSの扱い方で大きな困難を示したものであった。対象児自身高校生として自立心が芽生え、自らの欲求があるものの、うまくそれらをコントロールできず周囲との軋轢を生んでしまっている状態であった。そこで学校とのケース会議を複数回実施し、本人の認知特徴などを共通理解すること、本人にとって家庭、学校以外の居場所を作っていくことなどを確認した。しかし、不適応状況が長く続いてしまっており、特に友人関係が改善に至らなかったことが大きな要因となり、最終的に転校することとなった。学習に遅れがなくとも、社会性の課題が重篤になると円滑な学校生活に困難をきたすことが示されたことから、思春期に起こりやすい課題を整理して事前に共通理解を図り、早期対応につなげることが重要であると考察する。 また、保護者からの相談を起点に学校とのケース会議を実施した事例では、対象児から友人関係でのストレスについて訴えがあった。本人の思いや具体的な対応方法を学校と検討し、実施したところ、対象児自身が安心して教員に相談できるようになり、それまでは保護者に不満を訴えるだけだったことから、自ら教員に相談や対応策を持ちかけることが出来るようになっていった。セルフアドボカシーを高めることは、社会的自立を促すためにも重要であると考えられる。今後、より積極的に自己理解、セルフアドボカシーを高めるための介入について検討していくことが課題である。
|