本研究の目的は,超重症児の多様な学習活動のあり方に関して,以下の2点を検討することであった.すなわち,①超重症児のイニシアチブに基づく学習活動に関する長期間にわたる教育実践に関する映像資料を収集・蓄積し,その実相を明らかにすること,および②収集された教育実践資料を子どものイニシアチブの観点から検討を重ね,超重症児の学習活動を実現し促進する条件を見出すことである.第1の目的に関して,2021年4月から2022年3月の間に4名の超重症児への教育的対応の場面において収集された映像資料は以下のとおりであった.いずれの事例も常時人工呼吸器を使用しており,寝たきりの状態である.筋疾患の先天性ミオパチーを原因疾患とする超重症児である事例1については,視線入力装置を用いた課題学習に関する22セッション分の映像資料を収集した.今年度は,ヒラガナ文字言語信号系活動の拡大を意図した学習(ヒラガナ文「おとこのこがばななをたべる」や「おんなのこがりんごをきる」などに対応する絵カードとの見本合わせ状況)が重ねられた.事例2と事例3は,脊髄性筋萎縮症(SMAⅠ型)を原因疾患とする超重症児で,引き続き,視線入力装置によるヒラガナ文字群と画像との対応に関する学習(事例2)やヒラガナ文字言語信号系活動の多元化・多層化に関する学習(事例3)を行ない,いずれの事例も確実に学習は進展した.事例2については24セッション,事例3については18セッション分の映像を収集した.事例4は,重度の遷延性意識障害の状態像を呈する超重症児であり,視線入力装置を使用した学習活動を設定した.昨年度と比して覚醒水準が高いことが多く,視線入力による活動が実現できる条件を検討することができ,8セッション分の映像資料を収集した.
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