研究実績の概要 |
本研究においては、盲ろうおよび重複障害児とのコミュニケーションに関して、共同活動を創造するプロセスという観点から、実践的にその構造について明らかにすることを目標としている。2019年度までにおいては、対象となる重複障害児(重度の知的障害をあわせ有する弱視児や重症心身障害児など)に対する定期的な教育実践を継続しつつ、実践資料の蓄積を行い、共同活動のプロセスとそこでの相互的コミュニケーションの様相に関する映像資料の分析を進めてきた。また本来、研究の総括を行うべく2020年度は、前年度までに明らかになった視点を盛り込んだ教育実践を行うとともに、その資料収集につとめてきた。しかしながら、COVID-19により、教育実践(分析のための映像資料収集)の一時的中断が余儀なくされ、十分な研究の総括ができなかった(2021年度も同様の理由で総括ができなった)。こうした状況のなか、既に筆者は、これまでの研究において共同活動の成立・展開の諸条件について、触覚的共同注意の観点から明らかにしており(中村・川住, 2007;2009)、ビデオ映像記録を用いた微視的分析(マイクロ分析)によって、盲ろう児と係わり手との間に生じる活動を、共同で創り上げていくプロセスとして記述することを試みている(中村,2011)。さらに、盲ろう以外の障害児(視覚障害に知的障害を伴う重複障害児やろう重複児)に対しても、共同活動の成立・展開要因について長期的な実践研究(中村,2016 ; 大槻・中村,2017;2020)のデータを蓄積しているため、これまでに蓄積された実践資料(映像資料)を引き続き共創コミュニケーションの観点から分析した。これによって、そこでの相互的コミュニケーションの様相を構造的に明らかにし、一定の成果が得られた。以降においては、これまでの成果を基にコミュニケーション支援の方法の開発の総括を行うこととする。
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