研究課題/領域番号 |
18K02786
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
泉 真由子 横浜国立大学, 教育学研究科, 教授 (00401620)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多職種連携 / メンタルヘルス / 学校 |
研究実績の概要 |
学校現場における多職種連携・協働を阻害する要因を、学校、医療、福祉それぞれの立場から検討した先行研究の知見より、「多職種連携に対する学校・教員の自信の欠如」と「職種間のコミュニケーション不足」の大きく2つの要因が根底に存在すると考えられる。複雑多様化した子どもたちの課題に対応する際には多職種連携は必須であるが、一方で教員自身の(教育の)専門性のベースは確実に自信をもって保持しつつ、多職種の専門的知見からのアドバイスを適切に取り入れて、総合的にみてよりよい教育的支援を学校や教師自らが構築できることがこれからの学校現場には必要であると考える。 そこで本研究では、まず、学校教員が教育の専門家として、メンタルヘルス等の問題を抱えることもの学校現場でみられる特徴的な言動、様子の見取りの観点・方略の獲得を支援することを目的に、学校で見られる子どものサインの具体的な表現(言動等)を、医療や福祉の専門家が求める重要な情報と関連付けて再解釈する試みを行う。 本年度は、現在研究代表者が教育相談で関わっているA小学校で子どもの多様な特性が主な原因で学級運営に困難が生じている低学年と中学年各2クラスについて、各担任が主観的に感じるメンタルヘルス等の問題を抱えるあるいは今後抱えるリスクの高い児童の学校現場での特徴的な言動、生活上の様子についてヒアリングを行った。その結果、低学年では例えば上履きや帽子を着用できない等の身の回りの整備に特徴がみられ、中学年では間違えること自体に対する拒否感が強く学習やグループ活動に参加しない等の学習場面での特徴的問題行動が共通して語られた。低学年、中学年に共通して見られたのは、過度に性的な言動、授業中の立ち歩き、だしぬけな発言、また主に秋以降に対人暴力傾向の高まりであった。これらの内容を含めた「気になる行動リスト」を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、申請書段階では既存のアンケート用紙(①子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire: SDQ, 以下「SDQ」とする)、②生活と健康アンケート(全ら,2014))を用いた調査を計画していた。しかし担任教員個人の感受性の違いにより評価のばらつきが生じる可能性があることから、現場の教員や児童支援専任と相談の上、学校生活の日常場面で児童の気になる言動をヒアリングしたうえで、いくつか特徴的な言動を事前に把握し、それらを項目を含む「気になる言動リスト」を作成して、担任教員がチェックすることにした。そのためのリスト作成を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在研究代表者が教育相談で関わっているA小学校で子どもの多様な特性が主な原因で学級運営に困難が生じている2~3クラスについて、各担任が、1)子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire: SDQ, 以下「SDQ」とする)を用いて各児童について評価する。また児童生徒は、2)生活と健康アンケート(全ら,2014)を自ら回答する。また学級担任は、3)学校生活の日常場面で児童の様子について「気になる言動リスト」を用いて児童を特定したうええで具体的な言動の記録を一定期間蓄積する。1)の評定結果をもとに、支援の必要性の高さ(Total difficulties score)と4つの下位尺度得点(行為面、多動・不注意、情緒面、仲間関係)の状態、2)生活習慣や心身の健康面の状態、3)児童が示し教員がキャッチした具体的な「気になる言動」の関係を検討する。そして何らかのメンタルヘルス等の問題を抱えるあるいは今後抱えるリスクの高い児童が、学校現場では比較的教師の目に留まりやすい特徴的な言動、様子をどのように示すのかを、教員の目線から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた書籍が年度内の納入が難しかったため残額が生じた。未使用金は次年度に書籍を購入するために使用する。
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