学校現場における多職種連携・協働を阻害する要因を、学校、医療、福祉それぞれの立場から検討した先行研究の知見より「多職種連携に対する学校教員の自信の欠如」と「職種間コミュニケーション不足」の大きく2つの要因が根底に存在すると考えられた。複雑多様化した子供たちやその家族の課題に対応するために、学校が他の職種からのアドバイスを受ける機会が増えているが、このような多職種からのアドバイスを鵜呑みにして学校や教員としての主体的な教育支援活動を制限してしまっている場面も少なからず見受けられる。教員自身の学校教育の専門家としての自信は確実に保持しつつ、他の職種の専門家からアドバイスを適切に取り入れて、総合的にみてより良い教育的支援を学校や教員自らが構築できることが、これからの学校教育には必要であると考える。 最終年度は、これまで学校現場で実施した「中学生用気になる行動リスト」、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)、②生活と健康アンケート(全ら,2014)のデータと、対象生徒、教員、保護者の背景情報、さらに各ケースの経過と予後について質的に分析を行なった。各ケースの背景や表出する課題は異なるが、経過として保護者が客観的に子供を捉え他者の声を聞くきっかけとして、アンケート調査への回答が起点となった点は共通していた。アンケート調査に回答する過程で子供の様子を客観的に振り返ること、かつそのアンケートの回答内容をもとに学校関係者や専門職と対話をする糸口としても機能していた。一方で、子供自身の回答は客観性が乏しいケースもみられそれをもとに課題に焦点化した対話を始めることができるケースとできないケースがあった。 本研究はコロナ感染症の影響により、当初の目的であった学校現場に多職種(医療、福祉等)が集まり協働的な支援実践を行うことが実現できず、スクールカウンセラーとの協働が限界であった。
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