研究課題/領域番号 |
18K02795
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
小野川 文子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50738557)
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研究分担者 |
高橋 智 日本大学, 文理学部, 教授 (50183059)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 寄宿舎教育 / 特別支援学校 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、寄宿舎を併設する特別支援学校に在籍する保護者・教職員及び卒業生等の当事者への調査を実施し、特別支援学校寄宿舎の今日的役割・機能を検討することである。この研究目的を達成するために、2020年度は以下の調査研究を実施し、分析を行った。 北海道特別支援学校(知的障害)27校に在籍する保護者に対して、「子どもの家庭生活」「家族の生活」「保護者の健康」「親子関係」「地域や社会的支援」の5分野について質問紙法調査を実施し、知的障害児とその家族の生活実態を検討した。 調査結果から、多くの知的障害児は限られた人間関係と単調な生活を余儀なくされ、しかも年齢が高くなればなるほど固定化する傾向にあることが明らかとなった。また、保護者の就労や健康問題も大きく、とりわけ障害が重い、あるいは年齢が低いほど困難であることが示された。知的障害児やその家族に対する支援も徐々に拡充してきているが、さらに保護者の就労や健康問題を含め、知的障害児の「自立(経済的自立・社会的自立)」に向けた支援、発達的視点を踏まえた生活支援等の知的障害児の家庭を総合的に支える権利保障システムが不可欠であるとまとめた。 上記の調査結果から、知的障害児における特別支援学校寄宿舎の機能・役割を考察し、これまで行ってきた肢体不自由児、病弱児と合わせ検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、急遽、「コロナ禍における障害児とその家族の生活実態調査」を行うこととした。なぜならば、コロナ禍において、これまで障害児やその家族に対する支援の課題が浮き彫りとなるだろうと考え、調査を実施することにした。 この調査から、多くの子どもたちに運動不足やテレビ・ネットへの依存傾向、睡眠や食生活の乱れがみられ、体重の増減、体力の低下、中性脂肪値の高さ等、健康を脅かしている状況が示された。また、行動制限によるイライラやパニックといった行動面での影響が上位を占め、深刻な状況が明らかとなった。 家族の状況では、保護者、とりわけ母親の多くは子どもの介助を含め養育全般を担っていることから、「隔離生活などできない」「自分が倒れられない」といった精神的に張り詰めた状態であり、自由意見では、「不眠」「精神的にも体力的にも限界」「自らの通院もできなかった」などが寄せられている。また、「預け先がない」などによって就労困難となり「仕事を辞めた」「中学部だからとテレワークが認められなかった」など、呼びかけられている個人の努力を課すだけの感染予防策では、さらに障害児やその家族を窮地に立たせている。これまでの福祉・教育の脆弱性が一気に浮き彫りとなった。 このように、コロナ禍によって障害児とその家族の生活実態はさらに深刻な状況になっていることが示され、本調査研究にも活かせると考える。 今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、計画していた学会発表等が中止あるいはWeb開催となった。また、全国調査を予定していたが、学校関係者への調査は難しいと判断し中止とした。そのため、計画が大幅に変更することになった。
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今後の研究の推進方策 |
・2021年度には、2020年度の「コロナ禍における障害児とその家族の生活実態調査」の結果を加え、これまでの肢体不自由調査、病弱調査と合わせ、特別支援学校寄宿舎の機能・役割をまとめていく。 ・また、寄宿舎の機能・役割をさらに深めるために、全国の高等学校に設置された「寮」にも注目していきたい。 ・これまでの調査を論文にまとめ、投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、研究成果報告のための学会や研究会が全てオンライン開催となったため、旅費等の支出がなかった。また、特別支援学校の全国調査を予定していたが、全国の学校状況(感染予防対策などの教師の負担)を考慮し、調査をウェブ調査に切り替えた。そのため、調査結果のデータ入力など軽減され、それに伴う人件費が押さえられた。 次年度については、全国の高等学校に設置されている「寮」への聞き取り調査を実施するため、旅費及び調査に係る費用に使用。また、研究成果発表に向け論文投稿、報告集の作成に使用。
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