研究課題/領域番号 |
18K02795
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
小野川 文子 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50738557)
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研究分担者 |
高橋 智 日本大学, 文理学部, 教授 (50183059)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特別支援学校 / 寄宿舎 / 知的障害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、寄宿舎を併設する特別支援学校に在籍する保護者・教職員及び卒業生等の当事者への調査を実施し、特別支援学校寄宿舎の今日的役割・機能を検討することである。この目的を達成するために、2021年度は、高等特別支援学校(知的障害)に在籍し、寄宿舎に入舎する生徒(2年生と3年生)26人聞き取り調査を実施し、分析結果を論文にまとめた。 本調査から、知的障害・発達障害を有する高校生は、小中学校時代に同年代の友だちとのコミュニケーションや人との関わりの困難を抱えていることが明らかとなった。しかし、高等特別支援学校や併設された寄宿舎での生活を通して、生活技術の獲得や生活リズムの確立、そのことが卒業後の自立した生活への意欲や見通しにつながっていることが示唆された。また、困難と感じていたコミュニケーションや人との関わりが、親元から離れ、同じ障害のある仲間との生活を通してできるようになり、さらには自ら考えて行動できるようになったと実感していた。一方で、障害児の生活がきわめて単調であり、人間関係や経験の乏しさが、思春期・青年期以降も続いているが、多くの場合はそのような生活に不満も苦痛も感じていない。したがって、思春期・青年期にこそ人間関係の広がり、豊かな生活経験・社会経験が重要であり、感情を豊かにし、思考を深めるのである。ここに寄宿舎の役割があると考察した。 また、2021年度は、思春期・青年期に親元から離れた仲間との生活を経験することの意義を明らかにするために、高等学校の学生寮で生活している生徒(2年生と3年生)10人に聞き取り調査を実施した。あえて自宅から通える高等学校ではなく、遠くの学校を選択し学生寮に入った高校生は、どんな理由によるものなのか、また、集団生活が自らの成長にどのような効果をもたらしているのかを語ってもらった。分析はこれから行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 新型コロナウイルス感染症が2021年度もおさまらず、予定していた調査が実施できない状況が続いている。そこで、2021年度は、これまで行ってきた調査をさらに詳細な分析を行うことやこれまでの調査研究をまとめる作業を中心に行ってきた。 また、少し研究課題を多角的に捉えるようにし、障害児のみならず、通常の子どもを対象に、親元から離れた生活経験の効果、仲間との生活が子どもの成長発達にどのような効果があるのかを調査することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、さらに調査対象を広げ、特別支援学校の寄宿舎教育の機能・役割を考察し、最終報告をまとめる。 これまでの調査研究を論文化して社会発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた全国特別支援学校(知的障害)を対象としていた質問紙法調査がコロナ禍のより保護者へのアンケート配布が困難と判断し、実施しなかった。今年度は、対象範囲を広げ、可能な範囲で質問紙法調査及び面接法調査を実施し、課題研究を遂行する。具体的計画は以下のととおりである。 私立高等学校の学生寮で生活している高校生への面接調査を実施し、青年期に親元から離れ、集団生活することの意味について考察する。また、知的障害・発達障害を併せ持つ視覚障害特別支援学校保護者を対象とした質問紙法調査を実施し、寄宿舎教育の機能・役割を考察する。
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