本研究目的は、障がい児とその家族の生活及び発達上の困難・教育ニーズを明らかにし、特別支援学校寄宿舎の今日的役割・機能を検討することである。そこで、主に3つの調査を実施した。①寄宿舎併設特別支援学校に在籍する児童生徒やその保護者、教職員へのアンケート調査②寄宿舎に入舎している現役高校生への聞き取り調査③47都道府県の教育委員会及び全国の寄宿舎Web調査。なお、今回の調査は知的障害校を対象とした。 1、多くの知的障害児は限られた人間関係と単調な生活を余儀なくされ、年齢が高くなればなるほど固定化する傾向にある。また、保護者の就労制限や健康問題も大きく、低年齢や重度知的障害児にその困難が集中する。さらに卒業後の自立を困難にしている親子関係の課題も明らかとなった。寄宿舎生と通学生との比較では、子どもの生活、家族の生活、親子関係において通学生の困難が有意に高い結果となったことから、寄宿舎が大きな役割を果たしていることが示された。 2、知的障害を有する高校生は、小中学校時代に同年代の友だちとのコミュニケーションや人との関わりに困難を抱えていた。しかし、高等特別支援学校や寄宿舎での生活を通して、生活技術の獲得や生活リズムの確立、そのことが卒業後の自立した生活への意欲や見通しにつながっていた。また、コミュニケーションや人との関わりが、親元から離れ、同じ障害のある仲間との生活を通して豊かになり、さらには自ら考えて行動できるようになったと実感していた。 3、Web調査では、2007年の特別支援教育の制度化以降、寄宿舎教育の充実を図っている自治体と寄宿舎の統廃合を進める自治体とに二極化していた。 以上のことから、障がい児とその家族において寄宿舎は重要な役割りを果たしているが、社会的認知は低く、自治体の政策にも反映していると考える。今後の特別支援教育に寄宿舎教育をどう位置づけていくのか課題である。
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