研究課題/領域番号 |
18K02796
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
林 恵津子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (00413013)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 重症心身障害児 / 瞬き / 刺激の受容 / 対人行動 |
研究実績の概要 |
重症心身障がいのある児(以下、重症児とする)は、表出行動に著しい制限がある。そのため、言語・非言語コミュニケーション手段を用いて意図や感情を伝えることが難しい。保護者や支援者(以下、保育者とする)は、自らの働きかけが届いている、本人に快適な刺激であると想定して支援にあたっている。しかし、確信が持てないために、保育者の自己効力感が低下したり、おざなりな働きかけをしたりしている場合もある。重症児が保育者の働きかけをいかに受けとめているか、具体的には覚醒状態の変化や緊張、注意や興味の様相について客観的評価があれば保育者の自己効力感は維持されるであろう。 本研究では、就学前の重症児が利用する発達支援センターにて、保育者と重症児の対人場面における瞬きを記録する。瞬きから推察できる評価を保育者に提供し、よりよい働きかけについて協議を重ねていくことを目的としている。表出行動や行動反応に厳しい制限にある重症児の療育活動や子育てが、楽しく充実したものになるよう期待を込めて支援する実践的研究である。 本研究は就学前の重症児の対人場面における瞬き記録から得られた情報と所見を保育者に伝える。そのため、保育者とのラポール形成が重要である。昨年度から引き続き今年度も児童発達支援センターに出向き、保育者とのラポール形成に努めた。加えて、保育者から日常の様子を聞きとり、特に働きかけに対する応答行動の様子を把握した。特に、保護者からは瞬きを利用して知りたいことなどを聞きとり、瞬き記録の場面を追加設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定していた発達検査と瞬きの記録を行った。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、12月以降に記録を予定していた児については、発達検査と瞬きの記録が行えなかった。また、発達保育士と保護者との面談も実現していない。発達検査と瞬き記録の報告は文書にて児童発達支援センターに送付したが、保育者との面談が成立していないため、療育場面とのすりあわせや瞬き記録から得られた情報の有益性が確認できていない。さらに、保護者との面談も成立していない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスが終息した後に記録と面談を再開する。重症児は感染から自分自身を守る行動をとることが難しく、痰の排出機能や排尿・排泄機能の低下等により常に感染の危険に曝されている。そのため、研究再開は児童発達支援センターとの連絡を密にして慎重に行う。感染終息後の研究計画は以下の通りである。 (1)発達検査 重症児の発達アセスメントのためMEPAを実施する。その結果を保育者に報告して共通理解を図る。発達状況を把握した上で、表出行動では判断しにくい点、保育者が知りたい点を聞き取る。 (2)瞬きの記録 療育場面での重症児の瞬きを記録する。瞬きは1/33秒を単位として瞬きの開始と終了を同定する。瞬きの出現頻度と開閉の所要時間より、対人刺激への反応を評価する。 (3)保育者との協議 瞬きの記録結果を保育者に提供し、日常生活における児の様子を踏まえた印象を聞き取る。その上で、児が最も受けとめやすい関わりについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が2,282円ある。ほぼ計画通りに予算執行した。
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