研究課題
思春期摂食障害は深刻な身体的、精神的後遺症を残すことが報告され社会的にも重要な問題でありながら、早期発症型思春期やせ症の発症の多くが見逃されており、治療構造が統一化されているとは言い難い。初経経験前に発症する「早期発症型思春期やせ症」の発症のリスク因子を同定することにより、発症メカニズム解明を目指す。思春期やせに対する包括的地域診療プログラムのモデルを構築し、10年にわたり縦断的介入研究を実施した上で、治療効果および長期予後の評価を行う。実績概要:①外来・入院患者の生物学的基本データの集積を行うために対象となる約400名の患者データベースを作成した。小学生で発症した摂食障害児は全体の30%以上にのぼり、摂食障害発症が低年齢化していることが明確になった。また、やせ願望を示さない回避・制限性食物摂取症の小学生が増えていることも初めて明らかとなった。早期発達型摂食障害発症メカニズムの解明:獨協医科大学に入院加療した摂食障害患者を対象にバイオマーカーの評価を行う。②1年度は、もっとも基本的なデータである入院患者のバイタルサイン(体温、血圧、心拍数)と体重変化、栄養等のデータを縦断的に解析する目的でデータを集積した。データ解析の結果はまだ出ていないが、世界的に初めての試みである。入院患者の治療・データ集積は研究代表者大谷と分担研究者作田が行なった。三重大学松浦はデータ解析専用PCおよびデータ解析ソフトウエア(SPSS)を購入しロジスティック回帰分析等の方法でデータを解析を行った。データは外部HDに保存した。時間変数を加えて因果関係を解明することにより、影響度の高いリスク因子や保護因子を解明する。作成したデータベースをもとに、獨協医科大学と三重大学の研究者が年4回集まって、研究結果のフィードバック、協議を行った。
2: おおむね順調に進展している
順調にデータ集積は進んでいる。得られたデータは膨大であり、統計解析の方法を検討しながら研究を進めることになる。
①患者データベースをもとに、体重増加とバイオマーカーの変化を統計的に解析する。1年度は、バイオマーカーとして、もっとも基本的なバイタルサイン(体温、心拍、血圧)との関係を検討したが、次年度は血液検査やレントゲン等の諸検査から得られたデータとの関連を検討する。②治療モデルの構築を目的として、体重増加と強化子とした認知行動療法との関連を検討する。認知行動療法(行動制限療法)は、急性期を過ぎた時期から開始する。入院中期から退院を目指す後期は、退院後の社会復帰(登校、家庭生活)に向けて院内学級に参加、心理士による心理教育、支持的心理療法、家族療法等も行う。③退院後の学校復帰において環境整備が重要であり学校における養護教諭、学校医への啓発研修会の開催。学校や学校医との協力・連携が必要であり、保護者や本人の了解を得て、退院前・後のBMI値なども定期的に収集していく。④縦断的研究:外来・入院ケースを含めた長期予後研究(本研究はその基盤となる3年間を実施)を継続する。対象児の合併症(自閉症や強迫障害など精神疾患)の有無も検討する。
三重大学の繰越金320,300円、獨協医科大学203,885円、合計524,185円となる。理由・使用計画:データ解析は次年度に継続する必要があり、予定していた人件費等が繰り越しとなった。
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小児科学会雑誌
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