研究課題
思春期摂食障害は深刻な身体的、精神的後遺症を残すことが報告され社会的にも重要な問題でありながら、早期発症型思春期やせ症の発症の多くが見逃されており、治療構造が統一化されているとは言い難い。初経経験前に発症する「早期発症型思春期やせ症」の発症のリスク因子を同定することにより、発症メカニズム解明を目指す。思春期やせに対する包括的地域診療プログラムのモデルを構築し、10年にわたり縦断的介入研究を実施した上で、治療効果および長期予後の評価を行う。実績概要:①外来・入院患者の生物学的基本データの集積を行うために対象となる400名を超える患者データベースを作成し、継続した。2年度では近年5年に限って検討したところやせ願望を示さない回避・制限性食物摂取症患者が全体の約40%であり神経性やせ症と比較して低年齢発症かつ男児に多いことが示された。②早期発達型摂食障害発症メカニズムの解明:獨協医科大学に入院加療した摂食障害患者を対象にバイオマーカーの評価を行う。2年度は、入院患者のバイタルサイン(体温、血圧、心拍数)と体重変化、栄養等のデータを縦断的に解析した。その結果安静時心拍数、血圧、体温などの生理的指標の改善は治療経過と連動していることが示唆された。現在はさらに経時的な血液検査結果をデータに加えバイオマーカー評価を行っている。入院患者の治療・データ集積は研究代表者大谷と分担研究者作田が行なった。三重大学松浦はロジスティック回帰分析等の方法でデータを解析を行った。データは外部HDに保存した。今後は時間変数を加えて因果関係を解明することにより、影響度の高いリスク因子や保護因子を解明する。作成したデータベースをもとに、獨協医科大学と三重大学の研究者が年3回集まって、研究結果のフィードバック、協議を行った。
2: おおむね順調に進展している
順調にデータ集積は進んでいる。得られたデータは膨大であるが統計解析の方法を検討しながら研究を進めている。入院した摂食障害患者のバイタルサインと体重増加の相関など一定の結果も得られている。
①患者データベースをもとに、体重増加とバイオマーカーの変化を統計的に解析する。1年度は、バイオマーカーとしてバイタルサイン(体温、心拍、血圧)との関係を検討し2年度は血液検査から得られたデータを集積したため次年度は最終的なデータの解析を行い、学会発表や論文化を進めていく。②当科治療モデルは神経性やせ症を対象とした体重増加を強化した認知行動療法であり、認知行動療法(行動制限療法)は、急性期を過ぎた時期から開始する。入院中期から退院を目指す後期は、退院後の社会復帰(登校、家庭生活)に向けて院内学級に参加、心理士による心理教育、支持的心理療法、家族療法等も行う。今までのデータの集積から小児思春期摂食障害では痩せ願望を伴わない回避・制限性食物摂取症(ARFID)が約4割存在した。ARFIDでは治療法の修正を要することがあるため今後は従来の治療モデルに加えて、ARFIDにおける入院治療モデルの構築を進めていく。③縦断的研究:外来・入院ケースを含めた長期予後研究(本研究はその基盤となる3年間を実施)を継続する。対象児の合併症(自閉症や強迫障害など精神疾患)の有無も検討する。④得られたデータを解析し、小児科学会、小児神経学会、小児心身医学会等で発表、また、論文化を進める。
理由と使用計画:COVID-19の影響により出張が少なくなり未使用が生じた。データ解析に使用する計画である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)
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