研究課題
思春期摂食障害は深刻な身体的、精神的後遺症を残すことが報告され社会的にも重要な問題でありながら、治療構造が統一化されているとは言い難い。思春期やせ症の発症のリスク因子を同定することにより、発症メカニズム解明を目指す。思春期やせに対する包括的地域診療プログラムのモデルを構築し、10年にわたり縦断的介入研究を実施した上で、治療効果および長期予後の評価を行う。実績概要:①外来・入院患者の生物学的基本データの集積を行うために対象となる500名を超える患者データベースを作成し、継続した。2020年はCOVID-19感染症流行に伴う休校や外出自粛に関連したためか当院における小児摂食障診患者が2019年から2.2倍の71名に倍増したが2021年も60名と高い水準が維持された。②早期発症摂食障害発症メカニズムの解明:獨協医科大学に入院加療した摂食障害患者を対象にバイオマーカーの評価を行う。2021年は入院患者のバイタルサイン(体温、血圧、心拍数)経時的な血液検査結果と体重変化、栄養量の変化の相関を解析しバイオマーカー評価を行った。入院患者の治療・データ集積は研究代表者大谷と分担研究者作田が行なった。2021年は今まで2014年から2018年の5年間の患者データを対象にしたが、さらに2019年から2021年の入院患者を対象に追加したため対象は65名から110名に増加した。三重大学松浦はロジスティック回帰分析等の方法でデータを解析を行った。データは外部HDに保存した。時間変数を加えて因果関係を解明することにより、影響度の高いリスク因子や保護因子を解析した。作成したデータベースをもとに、獨協医科大学と三重大学の研究者が年3回オンライン会議し、研究結果のフィードバック、協議を行った。結果として入院患者の入院日数を予測する因子として脈拍の増加、fT3の改善の可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
順調にデータ集積は進んでいる。得られたデータは膨大であるが統計解析の方法を検討しながら研究を進めている。入院した摂食障害患者のバイタルサイン(心拍)や血液検査結果(fT3)と体重増加の相関など一定の結果も得られている。
①小児摂食障害のバイオマーカー:患者データベースをもとに、体重増加とバイオマーカーの変化を統計的に解析した。2021年度は対象患者を拡大し、対象者が65名から110名まで増加した。次年度はその内容を論文化していく予定である。②小児摂食障害治療モデル:当院は神経性やせ症を対象とした体重増加を強化した認知行動療法であり、認知行動療法(行動制限療法)は、急性期を過ぎた時期から開始する。入院中期から退院を目指す後期は、退院後の社会復帰(登校、家庭生活)に向けて院内学級に参加、心理士による心理教育、支持的心理療法、家族療法等も行う。今までのデータの集積から小児思春期摂食障害では痩せ願望を伴わない回避・制限性食物摂取症(ARFID)が約4割存在した。ARFIDでは治療法の修正を要することがあるため今後は従来の治療モデルに加えて、ARFIDにおける入院治療モデルの構築を進めていく。③縦断的研究:外来・入院ケースを含めた長期予後研究(本研究はその基盤となる3年間を実施)を継続する。対象児の合併症(自閉症や強迫障害など精神疾患)の有無も検討する。④得られたデータを解析し、小児科学会、小児神経学会、小児心身医学会等で発表、また、国際誌に論文化を進める。
COVID-19流行に伴い学会はオンラインとなり、他の出張もなくなり未使用が生じた。データ解析等に使用する予定となっている。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件) 図書 (6件)
Biopsychosocial medicine.
巻: May 17 ページ: -
10.1186/s13030-021-00212-3.PMID: 34001197
Brain and Development.
巻: May 19 ページ: -
10.1016/j.braindev.2021.04.007.