研究実績の概要 |
定型発達幼児を対象とした実験データを分析し、論文を作成した【研究実績①】。次に発達障害幼児を対象とした事例研究を論文として発表した【研究実績②】。研究実績①:知的障害児童や定型発達幼少児では, 相手との間に生じる社会的認知葛藤を適切に制御できず, 十分に話し合わないまま合意に至り, 学習に利益をもたらさない可能性がある。そこで, 社会的認知葛藤を認知的に制御することを促す介入の効果を検証した。年長児を介入群, 非介入群, 個人制作群に振り分けた。制作課題は, 見立て描画であった。2名で1つの作品を完成するペア制作において, 介入群は, 視覚的手がかりを用いながら表現方略に着目して話し合うように教示した。非介入群は, 自由に話し合って貰った。その結果, 介入群は, 事前個人制作から事後個人制作にかけて, 作品に適用された表現方略の水準が向上し, 構成要素数も増えることが示された。この効果は, 介入から2週間以降に実施した遅延個人制作でも維持された。ペア制作の発話の分析から, 介入群が, より多くの合意に向けた作品名や作品の構想の提案を明示し, その内容は見立てを表現するための図形と色の操作に関連付けられていた。本研究の介入が, 共同制作の合意形成で生じた社会的認知葛藤の認知的制御を促したと推考した。研究実績②:いざこざが目立ち教員から気になると捉えられていた年長児のペアを対象として、見立て描画を採り上げ、仲間との相互作用において互恵性を高める援助方法を検討した。援助は、作品名を決める話し合いの際、表現方略の視覚的手がかりを提示し、それを操作しながら考案するように導いた。その結果、表現方略の向上と構成要素数の増加が認められた。ペアでの話し合いの分析から、互いの発案に興味・関心を持ち、それを共有することで表現可能性を広げる方略を習得できたことが学習に利益をもたらしたと推察された。
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