本年度に実施した研究は、特別支援学校高等部に在籍する知的障害のある生徒を対象として て、造形表現の学習課題である見立て描画を採り上げ、仲間との相互作用において互恵性を高める支援の効果を調べた。研究に参加したのは、4名であり、一定の関係性のある2ペアを構成したうえで、本研究で開発した支援を実施した。支援の内容は、作品名を決める話し合いの際、表現方略の視覚的手がかりを提示し、それを操作しながら考案するように導いていくものであった。その結果、個別の事後制作において表現方略の向上と構成要素数の増加が認められた。ペアでの制作における話し合いの分析をふまえると、互いの発案に興味・関心を持ち、それを共有することで表現可能性を広げる方略を習得できたことが、見立て描画の学習に利益をもたらしたと推察された。この研究成果は、近年、重視されている協同学習のが、知的障害のある生徒において有効であることを示唆するものである。
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